第2話 タンパ


 フロントの20歳ぐらいの金髪白人女性さんから「ちょっと待っててね」と言われたけど暇だからエントランスから外に出る。ホテルの敷地を見回すと芝の上にカモメが3羽止まっている。


 ……そういえばカモメってカラス並みに賢いって聞いたことある。何かの役に立つかもしれない。魔法「動物調教5」を使ってあのカモメたちを調教してみよう。



 ーーそこのカモメ。調教!



 三羽のカモメは一瞬ビクッとしたあと私の方に視線を向けてくる。カモメたちのステータスを確認してみるとちゃんと調教できてました。

 私は「亜空間ルーム」を開けて、中からパチンコ玉くらいの大きさの「淡く輝く球体」を3個取り出す。調教したカモメ達に私の側まで来させてカモメの足に「淡く輝く球体」を一つづつ取り付けていく。……これを付けておくと半径20mの球状空間範囲において「魔法」が使えるのだ。


 この「淡く輝く球体」を作るのは大変だった。一個作るのに丸一日かかってしまうほどに。ストックは今カモメに渡した3個を含めて30個しかない貴重品です。




 ちなみに私自身もペンダントにして首から下げている。だから私も半径20mの範囲でしか魔法を使えない。不便だけど魔法のない地球で魔法を使おうとするならしょうがない。なお、神力を追加投入すれば魔法を使える範囲を更に拡大することもできるんだけど、半径20mを超えると途端に神力の負担が重くなるから厄介なのです。自分用だけは後で範囲拡大しておこうと思うけど、地球には魔法もないし魔物もいないんだから後回しにしているのです。




 ……さて、引き続きカモメたちを強化しようかな。カモメたちを強化するにはさっきフロントの女性から「英語技能」を知識・技能転写した逆操作でカモメたちに魔法技能を転写するわけです。



 ーーカモメたちを強化ーー精神構造干渉ーー 鳥用標準強化セットを転写!



名前 NO NAME ×3羽

種族 カモメ(男性or 女性) 

年齢 1〜5歳 体力G 魔力G

魔法 水弾4光弾4土弾4風弾4火弾3

   睡眠4回復5ステータス5神託5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5調教耐性3

   思考強化5老化緩和5

称号 亜神アリス・コーディの眷属カモメ 



 ヨシ、魔法を転写できたね。これだけの魔法が使えるなら私を除けば地球で最強なんじゃないかな? ではカモメたちと会話してみよう。カモメたちとーー念話!



『カモメ君たちこんにちは、私はアリスです。あなた達のマスターだよ、よろしくね」


『ギャッギャッ ギョー』



 あ、言葉教えるの忘れてた。エイっ ーー英語と日本語知識・技能をカモメ達に転写!




『……これで聴こえるでしょカモメ君たち。こんにちは、私はアリスです。あなた達のマスターだよ、よろしくね?』


『むううーー。貴様、すぐにこの支配を解くのだ。魚が食えないではないか』


『ごめんね、アメリカにいる間は調教されて私を助けてね、用が済んだら解放してあげるから。これから私は車に乗ってタンパに行くから空から付いてきて。身体強化魔術が使えるから余裕でついて来れると思うからよろしく。それと隠密使って見えないようにしてね。魚は勝手に食べてね』


『……約束だぞ? 必ず解放するのだ。マスター』


『わかったよ。あなた達の名前はカモメ1号、2号、3号ね』






「お待たせしました〜! さあ、車に乗って?」



 フロントのお姉さんから声をかけられた。







 フロントのお姉さんの車はホテルを出るといかにもビーチリゾートらしい別荘地やゴルフ場、ヨットハーバーを通り過ぎてしばらく郊外の住宅地を走った後にビックリするほど直線の海上道路に入った。時速50マイルくらい出しているので30分もかからずタンパ市街地に着くでしょう。道路の左右が海になっていて景色も気持ちもいい。 ……フロントのお姉さんは今更ながら私に名前や素性を聞いてきた。



「お嬢さん、私の名前はソフィア・タッカー。ルーマニア系アメリカ人よ。あなたお名前は?」


「エッ えーと マルチナ・ビアンコです。イタリア系アメリカ人です」


 適当に名前と素性を偽証しておく。タンパ市までのお付き合いだからね……見ず知らずの人だからいちおう慎重に。ごめんね?



「いいお名前ね。どちらからきたのかしら?冬休みの旅行なの?」




「……あのーハワイから来ました。家族で旅行にきたんですけでど親が急ぎの用事があって先に帰っちゃったので私一人で帰るんです……」


「へえ、そうなの。帰る便は取ってあるの?」


「……取ってないんです」


「なら今日はうちに泊まらない? 航空チケットは明日タンパ国際空港に行って取ればいいから……ああ今日中にWEBで取ってあげる、ねえ、そうしない? あなた他人とは思えないのよ。お姉さんに任せなさい、明日も空港までとチケット取って搭乗するまで面倒見てあげるよ?」




「……ああー、そうですね。ところでタンパについてからスーパーマーケットに行きたいんですけど、すいません……」


「分かった。○×△マートでいい?あと20分くらいで着くよ?」


「はい、お願いします!」







 タンパ市内の大型ショッピングマーケットに到着した。車を降りてお店の中に入っていく。



「ソフィアさん、やっぱり私は色々と用事があるからここでお別れしましょう。車に乗せてくれてありがとうございました」


「ええー遠慮しないで良いのに、女の子一人で夜に歩き回ったりしたら危ないから! どこか行きたいところがあるんだったらお姉さんがどこでも車で乗っけてってあげられるしーー」



「……すいません、とりあえずトイレ行っていいですか?」


「分かった。ここで待ってるから終わったら声かけてね?」



 私は○×△マートの中のトイレに入ると一応本当に用を足してから魔法「隠密3」を発動してトイレを出たーー魔法「探知3」以上の探知能力を持ってないかぎり私の存在に気付くことはないでしょう。

 フロントのお姉さんソフィア・タッカーの横をそっと通り過ぎて○×△マートの外に出るとそこらの通行人を捕まえて米軍基地の場所を聞き出してから南西の方向を目指して歩き出した。




 ……変なの。あのソフィア・タッカーって人しつこかったなー、私が特級の美少女とはいえあんな変な人に絡まれるのは困るな。レズの人なんだろうか? 外見は爽やかで健康的な美人さんなのに残念だね。とっさに偽名を教えたのはナイスだった、さすが私。







 ○×△マートから歩いて1時間半、時刻は既に午後の8時頃になっていると思う。時計持ってないから大体だけど。途中で何人かの通行人に基地までの道とか時刻を聞きながら歩いて基地のメインゲートまでやって来た。5キロぐらいは歩いたかな?


 私が歩いてきた広々とした道路の50mほど先にはドーンと屋根付きゲートが設けられており日本の高速道路の料金所のように一台ずつ車を確認するチェックポイントが2つ設けられている。迷彩戦闘服を着てM4カービンを肩に下げたサングラス装着の空軍兵士が2人、ゲートを入ってくる車を監視している。


 ーーアメリカ空軍マクディール基地ーーアメリカ中央軍司令部があるはずの場所だ。





♢♢♢♢





 その頃。○×△マートではルーマニア系アメリカ人ソフィア・タッカーはハワイ在住のイタリア系アメリカ人マルチナ・ビアンコを探していた。




 ついさっき勤務先ホテルのフロントで出会った美少女。いつもの習慣で鑑定をしてみて驚いた。



名前 繧「繝ェ繧ケ繝サ繧ウ繝シ繝?ぅ

種族 人(女性) 

年齢 16  体力G  魔力F

魔?  ??????水弾????弾??土弾??風弾?

   火弾??恐怖9??吐9悪魔???信?

   竜???信??ス???タス?

   暗視5遠視5隠?????????

   探知??魔法防御??念話??飛行?

   睡????魔獣調教1動物調教?

身体強?  筋力??持??????衝撃耐????

   睡??耐?????麻痺耐?????毒???????

   恐?????????????吐???????

   反応???度??防御?????化緩和?

称号 亜神繧「繝ェ繧ケ繝サ繧ウ繝シ繝?ぅ????

   の依り代 

   魔獣の調教師??動物の?



 大部分が文字化け! 普通の人間ではない! しかしこれではマルチナ・ビアンコの正体が分からない。分からないけど自分の上司達が警戒して探している者である可能性が高い。


 家に泊まるよう誘ったけど断られてしまった。マルチナ・ビアンコが出てきたらもう一回説得しよう。私は上司の指示に逆らうことはできないのだからしょうがない。



 マルチナ・ビアンコがトイレに入っている間にスマートフォンで仲間を呼ぶ。しかしいつまで経ってもトイレから出てこない。トイレの中を確認すると、なんという事か! 撒かれてしまった!





 結局。ソフィア・タッカーは○×△マートの閉店までマルチナ・ビアンコを探し回ったが見つけることは出来なかったのだった。



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