第4話 かくして彼らの命は摘み取られる。

斥候職の猫獣人の女、マニャは自分の置かれた状況が未だに良く理解できていない様子であった。

アレクに手足を切りつけられ、ガザルが縄でぐるぐる巻きにしてやり、芋虫のように地べたに転がってじたばたもがいている。


すでにマニャ以外の7人の斥候は始末した。

本当はアレクの手を借りず自分一人で彼らをどうにかするべきだったのだが、残念ながら戦闘能力はからっきしのガザルである。

アレクの力を大いに借りつつも、せめてという事で全員とどめだけはガザルが刺した。


残るは目の前にいるマニャ一人である。ガザルはもがくマニャを見てなんとも馬鹿馬鹿しい気分になってきた。


こいつらマジで馬鹿なんだろうか?


ガザルは思わず首を傾げたくなる。よりにもよって斥候職のもの8人全員でこの場にやってくるとは。

万一を考えて数名だけでくれば、最悪の事態が起きてもパーティ内に斥候は残り、彼らは継戦することが出来る。

しかし今回まとめて全員殺すことが出来るため、勇者パーティの目となるものどもがいなくなってしまうのだ。


これだけでも彼ら勇者なき勇者パーティはほぼ終了したと言っても過言ではない。


こいつらマジで馬鹿なんだろうか?


馬鹿なんだろうな。


ガザルは思わずため息をつく。マニャはお貴族様相手のお遊びみたいな狩りに随伴する斥候として名を上げた人物だ。

なかなか見事な毛並みと美しい容姿をしているから、身体を使ってお貴族様に取り入っていたなんて話も聞いている。恐らく真実であろう。


この女は真の意味での冒険をしたことがないのだ。危険な状況で少しでも生存確率を上げるため、あらゆることに気を配る。常に最悪の事態を想定する。おのれの力を過信しない。

どれか一つでもできていれば、この女はこんなふうに最悪の形で死ぬことはなかった。


あいつらの中で、斥候組全員で探索に出ようとするマニャを注意し、止める者はなかったのだろうか?


いなかったのだろうな。


あいつら全員、本当にヤバい状況で最悪を想定して行動しているものなど一人もいなかった。

あいつらはたまたまうまくいったテレポート頼みの飛び石拠点移動攻略がうまくハマっている状況に胡坐をかき、辿りついてもいない魔王城をすでに攻略しているかのようにふるまい、魔王討伐後の利権の分配などにばかり気を配っている様子だった。


ここは地獄の魔王領で、俺達はまだ何も為しておらず、目の前には注意すべき危険があちこちに転がっているというのに、奴らは誰一人としてその事に気を掛ける様子もなかった。


斥候職が全滅して、あいつらこの先どうしてゆくのだろう?

代わりになるような斥候がいるだろうか?


ガザルは52人のパーティメンバー全員の顔を順に思い出す。

冒険者上がりの料理人など、一部斥候を兼任できそうなものがちらほらいたが、あいにくとここは魔王領深域だ。大迷宮上層などとは危険度が段違いである。

下手なにわか斥候がおままごとのような偵察、調査をしたところで、却ってろくな結果にはならないだろう。


いや、一人だけ深層域でも通用するだけの実力を持った優秀な斥候になり得るものがいた。

ガザルの傍らに立つ勇者アレクである。


アレクの斥候としての才能は目を見張るものがあり、先ほども一線級の狩人ギルド所属の斥候7名を相手に見事な立ち回りをしてこれを無力化し、今またマニャを完璧な所作で抑え込み、マニャは地面に転がされじたばたともがくばかりとなっている。

まったく恐ろしい才能だ。


マニャなどいなくとも、勇者アレクが斥候として戻れば彼らはまだ充分にやっていけるだろう。


彼らが今の勇者と改めて友誼を結ぶことが出来ればの話だが。


ガザルは脇に立つアレクの様子をチラリと盗み見する。


アレクは心の底からマニャを憎んでおり、今も殺してしまいたいのを懸命にこらえている様子であった。


先ほどのアレクの激昂は、歴戦のガザルをもってしても心胆を寒からしめるほどの鬼気迫るものだった。


「お前がっ! 僕のっ! 初めての唇をっ! 奪った! 奪ったんだ! 裸で抱きついてきて! いきなり顔を近づけてきてっ! 唇をっ! ファーストキスをっ! 舌まで入れてきてっ! 僕のっ! 僕のっ!」


なんというか、ガザルとしては何も返す言葉がなかった。

よりにもよってマニャはアレクの繊細な乙女心を最悪な方法で大きく傷つけていたのだった。


アレクは決してマニャを許さないだろう。マニャと同じようにアレクにすり寄った女どもを一人も許さないだろう。

女どもをそそのかし、アレクへとけしかけた男どもを決して許さないだろう。


こんな状態のアレクとどうやって彼らが仲直りし、またともに救世の旅へと歩みを同じくすることが出来るのか、ガザルにはまるで想像がつかない。

彼らとアレクの間にある亀裂は思った以上に根深いように思えた。


それでともかくガザルは怒り心頭のアレクをどうにか宥めすかし、マニャをこうして生かしたまま、今は次の一手に向けて奴らの到着を待ち続けているところであった。


次の一手は単純な情報戦である。

ガザルは先ほどマニャを脅し、通信機器を使って奴らに対する呼びかけをさせたのだ。

「状況がおかしいのでテレポーターを引き連れ武装したものどもを呼んでほしい」と言わせ、「テレポートのためのビーコンは安全な場所に設置してある」と説明をさせ、ビーコンのIDを相手に伝えさせる。


スターリンク衛星を通じたインターネット通信は、異世界からやってきた魔族どもがを地球に大量の魔素をばらまいたせいで極めて部分的、局所的にしか使えなくなっており、特に魔素の濃い魔王領では殆どその用を為さない。

魔素が電磁波をゆがめてしまい、まともな通信が出来なくなってしまうのだ。


ただし、これを見越して魔素の薄い土地を選び出し、これを拠点としてテレポートと組み合わせ飛び石のように侵攻をしてきた今回の勇者パーティの戦略では、衛星通信が各拠点間の情報交換に大いに力を発揮し、このように移動した先のパーティの連中と通信を交わすことが出来るのだ。

リアルタイム通信などはとてもかなわぬから一方的に互いの情報を伝え合うだけの簡単な伝言メモ程度の使い道ではあったが、それでも相手との情報交換には十分な効力を発揮する。


今回の勇者パーティのブレーンはとてもよく考えて戦略を組み立てている。

おかげでそいつを利用して、こうして罠を仕掛けてやることもできる。


そんなわけで今、ガザルたちは次のものどもがテレポートしてくるのを待っているのだ。

これでもし彼らが来ればよし、来なければマニャを使ってもっとひどい一手を打とうというのが今のガザルの算段であった。


果たして彼らはテレポートしてきた。


どこへ?


30m程の高さもある大木の端っこに括りつけたビーコン目掛けて、だ。

ガザルはマニャが持っていた転移ビーコンを奪い取り、アレクに頼んでこれを高い木の枝に取り付けさせてやったのだ。


そうしたらどうなる?


重武装の彼らはそのまま30mの高さを上から下へとぼとぼとと落ちてきた。


彼らは揃って目の前の地面に良い具合に叩きつけられる。


ガザルは戦鎚を片手に振り回しながらうめき声を上げる彼らに近づく。若干高さに不安があり、運よく無傷、軽傷のものが出ないか少々心配だったが、全員が良いかんじにのたうち回っている。

すでにこと切れたか、ピクリと動かないものもいる。


面倒にならぬうちに戦鎚を使って丁寧にひとつづつ、その頭をつぶしてゆく。


数えてみて笑ってしまった。テレポーター2名、騎士が6名、剣士が3名、戦士が2名。

物理攻撃組ほぼ全員と、虎の子の移動手段テレポーター2人の命をこうも容易く刈り取ることが出来てしまった。

これで彼らは移動のための足と、戦うための物理的な武器を文字通り失ったのだ。


こいつらマジで馬鹿なんだろうか?


ガザルは呆れを通り越して悲しくなってきてしまう。


何で戦闘員を全員まとめて投入してきてんだよ。

戦力の逐次投入は悪手ってのはありゃあ、お互いの戦力差がはっきりしている戦争のときに通用する理屈なんだぜ。

今回みたいな相手の状況も見えない局所的な特殊戦闘では、ある程度小出しに武力を展開し、状況報告を密にするのがセオリーだろうが。

まずポイントマンを派遣して偵察を掛け、状況を把握してから初めて必要に応じ全戦力の投入だ。


それがいきなり最大戦力を暗闇に向かって突入させて、これが全滅し何の情報も返ってこないなんて、考えられる中でも最も最悪の結果じゃねぇか。


あいつらマジで馬鹿すぎるだろう。


最後の一人の命を刈り取りチラリと後ろを振り返ると、唖然とした表情のマニャと、ガザルを手伝いたそうにしているアレクの顔があった。


ガザルはアレクになるべく人殺しはさせたくなかった。

ガザルは先ほどアレクに殺しの覚悟を問うたが、ここまで20名全員についての止めは全部ガザルが刺してきた。


そんなガザルに対しアレクが不満に思う気持ちも分からぬでもない。

アレクはガザルと仲間になりたいのだ。苦楽を共にするパーティメンバーであれば、仲間殺しという汚名も同じく分かち合いたいのだ。


さてどうしたものか。


今この場で残る敵はマニャ一人。ガザルはこいつの処分にアレクを使うかどうか、いったん考えを保留にする。

それでともかくまずはマニャに向けて軽口を叩いてやる。


「まったく素晴らしい才能だな、マニャさんよぉ。お前、撒き餌としては最高のセンスあるぜ!

むくつけき男どもがお前の涙ながらの訴えにつられて13人も降ってきたぞ。そのでけぇおっぱいがヤローどもの庇護欲を掻き立てるのかねぇ。

おかげでこっちは大漁だ。

全くてめぇは斥候としては三流のヘボもいいところだが、囮としては最高のいい女じゃねぇか。

来世じゃ斥候辞めて餌役にでもなったらいいんじゃないか? 獲物の前で弱ったふりして誘うようなやつ。」


マニャはそんなガザルの挑発にも乗らず、真っ青な顔でただただガザルを見上げるばかりであった。


やれやれ。つまらない女だ。

ガザルはマニャに対する興味を失った。


そこでガザルは改めて一考し、この女はアレクに殺させることにして、アレクに声を掛けてやる。


「アレク? これでマニャは用済みだ。生かす理由がなくなったから後は処分するしかねぇ。お前はマニャに色々思うことがあるだろう? こいつの止めはお前が刺してみるか?」


対するアレクは震えていた。

俯き加減でその表情はうかがえなかったが、魔王殺しの聖剣を持つ手がカタカタと音を立てていた。


ガザルがそんなアレクの手にそっと自らの手を重ねてやると、ハッとなった彼女が見上げるようにしてガザルの方へと顔をむける。


「どうした? アレク。ずいぶんといきんでいるみたいじゃねぇか。人殺しは初めてじゃねぇんだろ?

怖いのか? 何をそんなに思いつめている?」


「ガザル様……。」アレクは今にも泣きそうな声で訴えかけてきた。

「僕はマニャが憎くて仕方がないんです。殺したくて仕方がないんです。マニャが気持ち悪くて、そばで同じ空気を吸っていると思うだけでぞっとして、ともかく早くこの世から消し去りたいと思うのに、憎しみのあまり身体がうまく動かないんです。」


ガザルは心の中でやれやれと嘆息をした。

彼女は頭の回転の速い早熟な女の子ではあるものの、所詮はまだ12歳の子供なのだ。

感情が爆発しそうになった時、どう心のうちで処理していいかわからずに混乱しているだけなのだ。


それでガザルは彼女の頬に手を当ててやり、目じりから流れる涙を軽く拭ってやりつつも声を掛けてやる。


「どうしてそんなにマニャが憎いんだ? マニャの何に腹が立っているんだ?」


アレクは少しばかり落ち着いてきたのか、言葉を選びながらもぽつぽつと語り出す。


「マニャは僕の……。僕の初めてを奪いました。僕は、僕はファーストキスは大好きな人に取っておきたかったんです。

僕は……。僕はマニャに汚されてしまいました。

僕は女なのに、初めては大好きな男の人が良かったのに……。

だから僕はマニャが嫌いです。

どうしようもなくマニャの事が嫌いなんです……。」


「そうか。」ガザルはそれだけ呟くと、身をかがめるようにしてアレクのところまで顔を近づけると、ちゅっと一つ、彼女の唇にキスをしてやった。


びっくりとした顔になったアレクが思わずといった様子で自らの唇に指を当てる。


大きな瞳がパチパチと何度も上下に瞬いて、つい先ほどまであふれていた涙もどこへやら、今はとにかく唖然と言った様子でまじまじとガザルの方を見つめるばかりとなる。


「どうした? 初めてのキスにびっくりしたのか? 思っていたのと違ったか?」

ガザルがいたずらっぽくそう笑いかけてやると、

「……どうして?」どうにかそれだけの疑問をアレクがようやっと口にする。


「お前、オレの事好きだろう? 初めては好きな男が良かったんだろう? だったら今、望みが叶ったじゃねぇか。それとも何か? お前はオレの事、好きじゃなかったか?」


ガザルには分かっていた。この年若い娘が自分に対し特別な感情があるという事を。


だいたいどうしてアレクがちょこちょこと自分にあんなにも絡みたがったのか、婆さんのまじないがかかっているうちは気付きもしなかった。

ガザルがアレクを男と勘違いしているうちは思いもよらなかった。

それがアレクが年頃の女の子と分かってからはすべてを理解してしまった。

この年若い娘は、色々誤解や思い違いもあるだろうが、あろうことかこのガザルに対して恋をしてしまったのだ。

だからあんなにもそばにいたがったのだ。

だから一人、ガザルのためにわざわざこうして駆けつけてくれたのだ。


そんなアレクが今、ガザルのキスに混乱してすっかり固まってしまっている。ガザルはおかしくてくすりと笑ってしまう。


「どうなんだ? オレの事、嫌いだったか? 好きでもない男にキスされて腹が立ったか?」


アレクはぶんぶんと首を横に振った。


「大好きですガザル様。僕、とっても嬉しいです。でもどうして……!」


ガザルはそんなアレクをそっと優しく抱きしめてやる。


「お前のファーストキスは今日だ。女としてのアレクが好きな男と始めてしたキスは今日なんだ。

マニャとのあれこれなんて事故みたいなもんだ。馬鹿なマニャがお前の事を勝手に男と勘違いして襲ってきたんだ。ノーカンだよ。

お前が女として初めて口づけを交わした相手は俺だ。マニャじゃない。だからお前にとっての初めてのキスは今日で、その相手は俺なんだ。そうだろう?」


「ガザル様! ガザル様!」アレクは嬉しそうに声を上げ、ガザルにぎゅっと抱き着いてきた。


ガザルはそんなアレクの背中をさすってやる。

「安心しろよアレク。お前はいい女だ。オレはそんなお前の事が嫌いじゃないぜ。オレは好きでもない女にキスをするほど節操のない男じゃねぇ。

お前はまあ、ちょっとばかり年が若いところはあるが、立派にちゃんと、いい女だ。だからオレはお前にキスをした。

オレはお前の事が好きだぜ。ちゃんとオレ達は相思相愛だ。

だからマニャの事なんて忘れちまえ。

お前の初めてはちゃんとオレが全部塗り替えてやるから、酷い思い出なんて全部なかったことにしちまえ。

出来るな?」


「はい、ガザル様! ガザル様!」

ガザルの腕の中で、アレクは何度もそう言いつつも頷いた。


次の瞬間、アレクの身体の中からふっと何かが抜け落ちるような気配がした。

まるで彼女に掛けられた大いなる魔法がその役を終え解き放たれたような……。


「お前は誰だ!」マニャの叫び声が上がった。


ガザルの腕の中からするりと抜け出したアレクが、そんなマニャの前に仁王立ちになり、嬉しそうにくすくすと笑いながらこう語り掛ける。


「お婆様が掛けてくださった魔法が解けたんだ。

お婆様のまじないは愛する人とのキスで解けるようにして下さっていたから、今まさに僕の魔法が解けたのさ。

僕は見ての通り女なんだ。下町の娼婦の娘、アレクサンドラとは僕の事なんだ。故あって今まで男のふりをしてきたが、このように僕は身も心も女なんだぜ。


お前はお婆様の幻影魔法に惑わされ、ずっと僕を男と勘違いしていたんだ。

まったくお前にはひどい目にあわされた。お前のせいで僕の大切なファーストキスが危うく奪われるところだった。


けれども僕はお前を許してあげるよ。

お前のおかげでこうしてガザル様と想いを交わすきっかけが出来た。かなうはずのない恋に僅かばかりの可能性が生まれた。

お前の愚行が、僕に思わぬチャンスを与えてくれた。


僕はだからお前をもう憎まない。

むしろお前に感謝すら覚える。」


ここでアレクはくるりとガザルの方へと向き直る。


「僕はマニャを許します。このものへの憎しみはもうありません。けれどもマニャは生かしてはおけないように思います。この場で殺した方がいいと思うんですがどうでしょう?」


ガザルはそんなアレクの質問に黙ったまま、親指を立てた右手を首のあたりで左から右へと払う仕草を返してやった。

下町のギャングたちがよく使うジェスチャーだ。ガザルはその意味を知っているし、アレクももちろんその意味を知っている。


アレクは七色に輝く美しい宝剣を掲げると、一閃、次の瞬間、見事に跳ねられたマニャの首が宙を舞った。


こうして、勇者アレクとしての初めての殺人行為はいともたやすく執り行われた。


アレクが聖剣を一振りすると、剣についた血糊が奇麗に払われ、その美しい刃紋はあっというまに元の輝きを取り戻す。まるで吟遊詩人が語る英雄譚の一コマのような絵になるシーンであったが、残念ながら彼女がしたのは身内殺しの大罪だ。

それでもガザルは、そんなアレクの振る舞いを心底美しいと感じてしまった。

彼女は若くとも本物の勇者で、自分などとは格の違う、本物の英雄なのだ。


そんなガザルの心のうちをつゆとも知らず、そのままパチンと聖剣を腰の鞘に納めたアレクが、ちょこちょことガザルのもとへと駆け寄ってくる。


見上げる彼女の、どこか期待した表情。


ガザルはアレクの頬に手を掛けると、もう一度彼女の唇にキスをしてやる。今度は舌を使ってのいやらしいキスだ。

先ほどのアレクが、初めてのキスでマニャに舌まで入れられたようなことを喚いていたので、上書きする意味でも同じようにしてやった。


アレクは嫌がらず、うっとりとした表情でガザルを受け入れた。


ガザルは自分の娘と同じ年頃の女を相手にした破廉恥な行為に背筋がぞっとなる思いであったが、今はそんな事を気にしている場合ではない!


自分達が生き残るためにはアレクの精神安定は早急の課題であり、今の状況でガザルが思いつく最善手がこんなものしかなかったのだ。


懸命に絡めてくるアレクの舌遣いを受け入れつつ、ガザルは「多分これオレ、ろくな死に方しない奴だ」とそんな事をぼんやりと考え始めていた。


ガザルは魔王討伐の最後の最後になってアレクをかばい命を落とす自分の姿を幻視した。


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