第3話

「ゲロ」3


 無様に笑うホームレスの隣でタバコを吹かした。

 魔sa4と名乗るホームレスはスプレーで橋桁に絵を描いている抽象画のような無意味な絵を自慢気に解説している。安い芸術家のテーマ“生と死”を熱く語っている。俺はチューハイにやられて多摩川へゲロを吐いた。戻ると魔sa4が俺の顔色の悪さも気にせずに芸能論を語る。あぁだからコイツは家が無いんだな…。


 他人の顔色を伺って生きてるヤツはそれなりに生きれるが不満げな顔付きをしている。気色悪い人間の仲間入りだなと思った。

 自分のルールに従って生きてるヤツは他人が眼中に無いから全てを理不尽だと決めつけている。

 人間の造る物は素晴らしいが人間は破壊的で破滅的な生き物で欲深い不完全な生き物である。

 完璧な生き物は植物であり其処にずっと居るのである。


 自然と流れる河の動きを見て、顔を上げるとビル街が遠くに見える。反対側を見ると山々が聳えている。どちらも自然の中にある。


 素直さは自然の中にあり、人間もまた素直に生きることが出来たなら自然と調和の中で生きれるのになと思う。


 俺は軽自動車からハンマーを取りだらしなく寝ている魔sa4の顔面を数回殴り付けて殺した。血が喉に詰まってモガモガ藻掻きながら死んでいった。俺は死体を眺めて景色の中に転がる自然体の芸能を堪能した。


 生と死はどちらも経験しないと解らないのである。今のこの瞬間、俺が生きていると言えるのだろうか俺は動いているだけであり果たして生きていると言えるのであろうか…。


 過去に思い込みと勘違いにより命よりも大事だと思っていた女に捨てられた。容量とデータが少ないが故に“別れ”と言う最終手段しか無い女であった。

 それ以来、心が無くなった感じがする。

 あの女のような人間だらけであり例えるならアリンコの巣の中と人間の生活は同じだと気付いたのである。見た目は違うが中味はアリンコと人間は同じなのである。言葉というのはまやかしであり、発した言葉を実行に移す事が出来る人間は限られていて殆どの人間は自分が発した言葉を理解できていないのである。

 俺は素直に生きているから自分が発した言葉を実行に移す事が出来るが、文字や言葉の意味が理解出来ていない人間が多いのである。

 生きる上で死が近くにあった時代は言霊を重んじていて態度や言霊により人間の行動が変わっていたのだが、今は科学や技術が発展していくと同時に人間自体が機械になってきているのである。単細胞生物になってきているのである。

 子供を持つ人間は育てるの意味が解らないから、子供の言いなりに成り下がり、子供の心を放置するのである。子供の居ない人間は無知のまま動くだけである。


 時代の転換期の中にあり時折、敏感な人間も居る。敏感に危険を察知することが出来るのだがその他の単細胞生物達により迫害されるのである。単細胞生物達は敏感体の金と言う金券を貪ろうともしてくるのである。単細胞生物達は無限に湧き出るので敏感体を次々と侵食して行く…それもまた自然なのかも知れない。


 単細胞生物達によって人間は破滅して地球はバランスを取っているのかも知れないー。


つづく

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