2018年 9月20日

私たちは、講義の出欠確認が終えたのを確認すると、そのまま教室を後にし、煙草を喫みに言った。


マッチを一本擦り、そのまま煙草の先端に火を灯す。

燻らせた紫煙が辺りを包み、外界から遮断する。

およそ、害しかないものを体内に満たしているのに、何故か心は清々しい。


「丁策まで講義さぼるのに付き合わせてしまったけど、良かったの?」

真面目な友人に不義理を働かせてしまったことに、今更ながら罪悪感を覚える。


「あの教授、話長くて退屈なのが取り柄でさ。やたら鼻にかかるし。正直しんどかったから丁度良かったよ」

彼が煙草を吸う姿はとても絵になる。

純真そうな容姿で、喫煙している、という事実は良い意味でギャップになっているし、同じ煙草を吸っているはずなのに、彼の物は、高級な葉巻のように見える。

煙草から流れる紫煙も、舞台役者に焚かれるライトのように、彼を幻想的に魅せていた。


「初回からさぼるの、やばくなかったかな」


「大丈夫でしょ。ここから余程さぼらない限りは。心配なの?」


「単位がちょっとぎりぎりで…。

前期も教授に、そのことで結構絞られたし」

私は苦しい顔で答える。


「珍しく真面目に出席していると思ったら、そういうことだったのね…」

呆れ半分、尊敬半分、といった顔で、彼は私を見る。

「あの講義は出席以外、重要視していないから。藍河だったら問題ないよ」


「よかった…。それなら何とかなりそう」

彼の言葉に安心した私は笑みを零した。

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