2018年 9月20日
「そういえば、何でこの講義選んだの?」
丁度、一本目の煙草を吸い終えた時、丁策がそんなことを聞いてきた。
「何で、か…」
私は、フィルターまで燃え尽きた煙草を、灰皿に擦り付ける。
「この講義、必修じゃないでしょ」
丁策は、既に二本目の煙草にライターを近づけている。
「それなのに、わざわざ履修する人って、心理士資格取ろうと思っている人たちだから、藍河もそうなのかなって」
「丁策は、心理士資格取るってこと?」
私も、二本目の煙草に火を灯す。
マッチ特有の木の香りが、鼻腔を突き抜ける。
「一応ね。母親が心理士でさ。
ちょっと興味あって」
「なるほど。丁策なら資格取るのも余裕だね」
「いや、流石に厳しいよ。臨床心理士の資格とってみたいけど、国家資格だからハードル高いし、院への進学も視野に入れないと難しいからね…」
彼にしては珍しく、憂鬱そうな表情を見せている。
「雲の上の話だよ…。資格とか、全然考えてなかった…」
「そうなの?資格のために履修したのかと」
丁策は心底驚いているようだった。
「うん。面白そうだなって思って。
分析心理学とか、後、心理学者の思想とか」
「あ―、確かに、この講義、結構心理学者の思想とかについて、深くやっていくみたいだね」
「そうなのよ。統計心理学とかは苦手だけど、思想を学ぶのは好きだからさ。ユング好きだから分析心理学も学んでみたかったし」
「良い!凄く良いと思うよ。
仮に資格取らなかったとしても、学者の思想や分析心理学の知識は絶対に活きていくし」
丁策は、少し興奮気味に、私の肩を掴みながら話す。
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