2018年 9月20日

トースターが音を鳴らした。


マヨネーズはこんがりと焼け、黄身も半熟とちょうどいい塩梅だ。

出来上がったトーストを皿によそい、温めておいた珈琲プレスに、挽き終えた豆を入れる。


やかんの方は火をかけっぱなしにしてあるので、かなりやかましい汽笛を鳴らしている。


必要以上に沸き上がったお湯を(ある小説の中で、『良い珈琲とは、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、そして恋のように甘い』という、フランスの伯爵が残した名言が挙げられているのだが、私もそれに倣って、珈琲に使うお湯は熱々に沸かすようにしている)珈琲プレスに注ぎこむ。


後は抽出が完了するまでの四分間、トーストを少しかじりながら待つだけだ。


トーストをかじりつつ、リモコンを手に取りテレビを点ける。

適当にチャンネルを回しながら時間を潰していると、ニュース番組に切り替わったところでタイマーが鳴った。


丁度四分経ったようだ。


プランジャーをゆっくり押し下げ、カップに珈琲を注ぐ。


滑らかな黒い液体が静かに音を立てながら注がれると、その瞬間、閉じ込められていた香りが急にフワっと花開くように広がった。


その香りをそのまま口に流し込む。香ばしい香りが口内から体中を突き抜け、苦みと甘みが連れ添いながら、余韻となって体をゆっくり駆けていった。

トーストから流れる黄身に苦戦しながら、朝食を片していく。

 

「・・・ニュースです。

今日未明、都内のマンションで火災が発生したとの通報がありました。

無事火は消し止められましたが、焼け跡からは身元不明の遺体が見つかっており、逃げ遅れた住民ではないかと推測されます。

火元は現在調査中ですが、ガス栓の故障によるガス漏れと…」

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