2018年 9月20日

珈琲の香りと共に一日を始めるのが私の日課だ。


ここ最近は、寝起きが優れなかったために、インスタントで簡単に済ませてしまっていたが、せっかくの天気だ。


久しぶりに豆からきちんと用意することにした。


一口に珈琲豆といっても様々な種類がある。


品種、焙煎度合い、挽き具合、抽出方法によって、香りも味わいも変わってくるので、その日の気分に合わせて豆を選び、抽出方法も変えていくのが、最も適した飲み方だと、個人的には思っている。


「これにしようかな」

私はキャビネットからガラス容器を一つ手に取った。

ラベルには「マンデリン」と記載してある。


「マンデリン・ビンタンリマ」

インドネシアの豆で、深煎りで焙煎することが好まれ、深いコクと苦み、豊かな香り、しっかりとした甘みが特徴の豆となっている。

抑えられた酸味、フルボディなしっかりとした味わいは、マンデリンの五つ星、という呼び名をそのまま体現していて、中々に良い。

起き抜けに飲むには少々重いかもしれないが、疲れた心を珈琲の香りと味わいで満たすには丁度いいだろう。

黒曜石のような、艶やかで深い黒色を纏ったその姿は、味覚、嗅覚だけでなく視覚でも心身を満たしてくれる。


気が急くのを抑えながら、珈琲豆の入ったガラス容器と、同じように陳列してある珈琲セット一式(珈琲カップ、ソーサー、珈琲プレス、珈琲ミルの事をまとめてそう呼ぶようにしている)を持って支度にかかる。


珈琲セットにも豆と同様こだわりがある。


珈琲ミルは実用性だけでなく、陳列した際に目でも楽しめるよう、程よいサイズ感で木製の物を選んでいる。

可愛らしい佇まいと滑らかな木目は見ているだけで癒される。


カップとソーサーにも抜かりはない。


各地を歩き回っていた時に一目惚れした萩焼の陶器は、雪のように淡い色が溶け合って、まるで夕焼けの様な儚さを醸し出している。

値は張ったが、「萩の七化け」という言葉があるぐらい、使い込めば使い込むほど味わい深くなっていくものなので、一生物と考えれば安い買い物だろう。


欠点を一つ挙げるとするなら、珈琲ミル、カップ、ソーサー共に手入れが面倒、ということだが、逸品と呼ばれるものほど手がかかるもの。その手間を楽しむことで、更に愛着も湧いてくるはずだ。

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