第3話 博士の回顧。
いかれている。
取り繕っても取り繕っても、私は前にしか進めない。
研究職になった。世間的にも学があるということだ。私は何度も繰り返す。あの実験を。
彼らはただ閉じ込められている。なぜ?
そんなの決まっている。私は科学者だ。そして彼らは被験者だ。科学実験のために同じ人間を、ましてや子供を狭い空間に閉じ込める。鬼畜の所業、とは正にこのことだ。
誰がこんなことを始めたのだろうか、私は気が付けば手を染めていた。
夢というか、目標とあこがれを抱き研究職を志す。だが、あいにく現実は甘くない。そんなことをたたきつけられている。今、したいことは何かと問われれば、もう浮かぶことはないだろう。
惰性で生きている、というのが適切かもしれない。
だから死ぬ前に、苦し紛れにしたことは。きっと良心の最後の生き残り、というかそんなものだろう。
逃がしてあげよう、と思い立ち、彼らを逃す。
名前は何と言ったか、由里子、樹生、たつきだったかな。この名前は誰がつけたのだろうか、そもそも彼らはどこから連れてこられたのか、すべて私の手には負えない。私の手の外、範囲外にあることだから。
私は何で死ぬのだろう。そんなことをぼんやり考えながら意識は遠のいていく。
はっきりとぼんやりと、うつろだったろうか。
目の前は良く見えないけれども、光を感じる。何の光だろう。
だが今の私には希望の光だと感じている。そんな暖かい光はいきなりブラックアウトと化すのが常なのだ。
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