嘘 #13

りく先輩「ここちゃ〜ん!」


急に開いたドアの音と共にりく先輩の声が教室中に響いた。


心愛「!?」


凛「りく先輩だ〜!心愛ここですよ〜!」


心愛「ちょっと..!凛. .!」


りょう「またかよ...」


凛「ほら!りょうはうるさい!心愛?ちゃんと向かい合わないとっ」


凛が言ってることは本当にその通りだった。率直に気持ちを伝えてくるれん先輩とりく先輩に対して、私だけ気持ちをあやふやにしている。凛はここまでりょう君に対して一途だからこそ自分も動かなきゃいけないと思えた。


心愛「ありがとう、凛。話してくるねっ。りょう君も話してるところごめんねっ、行ってくる。」


りょう「お、おう、行ってきな」

凛「うん!待ってる!」


意外とすんなりりょう君も受け入れてくれて、りく先輩のいる教室の出入口のドアに向かった。


りく先輩「今日居残りだよね?」


心愛「え、えっと...なんでそのこと...」


昨日のれん先輩との事があって少し気まづくなってしまい、話すと動揺してしまった。それにしてもりく先輩の目がまたあの違う人格のような冷たい目になっている気がした。


りく先輩「周りから聞けば分かんだよね、今日居残りの人少ないから学年関係なく一緒にするらしい。」


心愛「そうだったんですね!教えてくれてありがとうございますっ!」

(少しでも明るく振舞ってれん先輩との事は隠しておこう...)


するとりく先輩は耳元に口を近づけ周りに聞こえないように話し始めた。


りく先輩「それだけ?話すことあるんじゃないの?まあ放課後聞くからいいわ、また放課後。どんな話聞けるか楽しみに待ってるよ。」


そう言って私が話す間もなくりく先輩は自分の教室に戻って行った。少し嫌な予感はしたけど昨日のれん先輩との事をりく先輩が知ってるはずもないと不思議に思いながら凛とりょう君のいる席に戻った。


凛「なんだったの!?なんかヒソヒソ話してたけどっ」


心愛「ん〜。私にもよくわかんなかった...」


凛「なにそれっ!」

りょう「なんだよそれ」


凛「ちょっと!被んないでよ!りょううるさいなぁ!」

りょう「はぁぁ!?なんだよそれ!お前がここに誘ってきてんだろ!?」

凛「誘ったけど来たのはりょうじゃん!」


心愛「...ははっw ごめん笑っちゃった(笑)」


凛「なんでなんで!?(笑)」


心愛「だって2人の言い合いいつも面白いんだもん(笑)」


りょう「どういう事だよ...」


------------キーンコーンカーンコーン------------


凛「うわあ!もうこんな時間!席戻るね!」


そこから午後の授業が始まり、居残りで少し憂鬱な放課後の時間になってしまった。


------------居残り室-------------

先生「はーい、今から渡す反省文と、課題やったらそれぞれ帰るように。先生はやる事あるからこの机に置いて帰れよ〜。」


居残り担当の先生がたまたま担任の先生だったこと、居残り人数が少なかったことから緩く進んでほとんど自習状態に近かった。


-------------ガラガラッ-------------

先生が教室から出ると他にいた居残りの生徒達が皆仲良く話し始めた。早く帰りたいと思い、必死に1人反省文を書いていると声をかけられた。


??「君、転校生の心愛ちゃんだよね!?俺、2年のりくの友達なんだけど仲良くしない?」


心愛「え、えっと...りく先輩の友達さん..ですか...?」


こんなにいきなり近寄られるとやっぱり戸惑ってしまって話す言葉が見つからずに焦ってしまった。仲良くなるべきなのか分からず1人困っていた時だった。


りく先輩「おい。俺、お前の友達だった?」


2年生の先輩「い、いや、話したことはあるじゃん?」


りく先輩「それ友達?俺仲良くなった人しか友達としか思えないんだけど仲良かったっけ?俺覚えてないや」


2年生の先輩「ご、ごめん、心愛ちゃんに近づきたかっただけだからっ...ほら、これキッカケに皆で仲良く...」


りく先輩「え?無理。俺のここちゃんに口説いてる所からもう友達と思えないや〜」


心愛「え、えっと...りく先輩?」


りく先輩「な〜に?ここちゃん?」


そう言って私の肩に腕を組んで近づいてくるりく先輩


チュッ


心愛「あ、あ、あああの...//」


近づいて来たかと思えばいきなりりく先輩の唇が近づき軽くキスされた。


りく先輩「どうしたの?こんくらいいつもしてるじゃん?まだ恥ずかしい?」


2年生の先輩「くっそ、あの噂ほんとかよ」

2年生の先輩の友達「ほら言ったじゃん、あいつビッチなんだって」

2年生の先輩「やっぱモテる男2人引っ掻いてるだけあるわ〜」

2年生の先輩の友達「スタイルいいし可愛いもんな〜、ちょっと近寄ったらお前でもいけると思ったけどなあ」

2年生の先輩「はははっ(笑)邪魔なのいなかったらいけるいける(笑)」


変なことを聞いてしまって正直傷ついた。そんなふうに見られるとわかり、りく先輩の胸を押して引き離し、自分のやっていた反省文の続きを書き始めた。


りく先輩「お前らさあ、俺、生徒会絡んでるから何も出来ないとでも思った?一応年上だけど?」


2年生の先輩「いや。正直さあ、さっきもキス見せつけてきてお前が遊びたいのもあんじゃねえの?」


りく先輩「は?無理。ここちゃん。ちょっとごめん。目瞑ってて。」


そう言われ、りく先輩の冷たい目に少し怖くなって急いで目を瞑った。


---------------コソコソッ--------------


何かりく先輩がコソコソ言ってる声が聞こえたけど何を言っているかまでは分からなかった。

その後静かな空間のまま肩に手を触れられてビックリして目を開けた。

りく先輩の暖かい手が肩に置かれ、前を見るとさっきまであんなことを言っていた先輩たちも静かに反省文を書き始めていた。


心愛「りく先輩...?」


りく先輩「ここちゃん、大丈夫?さっきすごく怖がってた様に見えたから。」


心愛「あ、ありがとうございます...(泣)」


りく先輩「ええ、ここちゃん!?泣かないで!?俺たちもう帰れるから帰ろ?」


心愛「へ!?帰れるって...どういう...」


りく先輩「まあまあ、いいからっ!」


正直怖かった反面、今までこんなふうに守ってくれる人がいなくて守ってくれた嬉しさと、凛と友達になった時に似た感情が湧き上がってきて自然と涙が溢れ出てしまった。

それにしても目を瞑ってる間に何があったのか不思議だった。


りく先輩に手を掴まれて言われるがまま学校を出てついて行くと、着いたのは初めて2人で過ごしたゲームセンターだった。


りく先輩「ここちゃん、またここ?って思ったでしょ?」

心愛「いやいや!びっくりはしたけど...」

りく先輩「ここの2階行ったことないでしょ?」

心愛「2階ですか?」

りく先輩「うんっ、ほら行こ行こ!」


繋いでいる手の力が少し強くなり2階に連れていかれた。


心愛「ここって...ビリヤード場ですか...?」


前を見るとビリヤード台が沢山並び、皆ワイワイとビリヤードを楽しんでいる空間があった。


りく先輩「そうだよっ。ここちゃんビリヤードしたことある?」


心愛「な、ないです...難しそうだしする相手も居なかったから...」


りく先輩「じゃあ僕が初めてだ〜!教えるから今日は楽しもっ?」


心愛「え、えっと、は、はいっ...」


りく先輩は慣れた手つきでビリヤードの準備を始めた。


りく先輩「...で、あの番号の球を入れたら次は...って聞いてる?」


心愛「き、聞いてます!」


りく先輩「ん〜説明だけじゃ難しいよね。おいで?」


りく先輩の元に行き、3角形に並んだ球を前に、キュー(球を弾くための棒)を渡された。


心愛「ど、どうやってやったら...」


りく先輩「ほら、ここをこうやって持って、向こうの珠の真ん中を狙ってみて?」


そう言いながらりく先輩は私の体に覆いかぶさって体勢を整えてくれた。近い距離に自然と恥ずかしくなって、顔が熱くなった。


りく先輩「今、俺の事考えて顔赤くなってんの?」


心愛「い、いやっ!そうじゃなくてっ//」


りく先輩「2人きりは警戒されそうだからここにしたけど、昨日のこと、なんで隠そうとしてんの?」


心愛(昨日のことってまさかれん先輩との夜のこと!?でもれん先輩がりく先輩に言うはずもないし...分からないけど...とりあえず知らないフリして見ても...)


りく先輩「誤魔化しても無駄。ほら、顔に出てんじゃん」


私のほっぺを片手で掴んでりく先輩の顔を見上げさせられる。気まづくて自然と目を逸らしてしまった。


心愛「な、なんのことですか...」


りく先輩「はぁ...まだ隠すんだ。俺、夜寝てると思った?それにしてもあんな声出すんだねここちゃん。その声俺に向けて出して欲しかったんだけどなぁ。それで?何してたの?」

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