第4話 決心
仁は、夢のような気分で歩いた。今見た出来事を、誰かに早く話したいとの思いで家路を急いだ。母親、妹、弟たちが待つ家は、そろそろ夕食の準備をしているに違いない。興奮気味に駆け足で帰ると、仁は温かく家族に迎えられた。常に控えめで、誰かの話を聞いている方が多い仁が、帰るなり今日見た出来事を話し出すので、家族は興味深々な様子で話に聞き入った。すごいすごいと弟や妹が言うので、仁は自分の手柄でもないのに嬉しくなった。
武智五山。仁は、その名を深く胸に刻みつけた。命を救ってくれた人の名だ。寝床に入ると、仁はその名を何度も繰り返し呟いた。いつか再開出来たら、きっと御礼をしようと心に決め、目を閉じる。仁は、今日という日を忘れることがないだろうと確信した。今後何年生きようと、あるいは死んだところで、今日の出来事が仁の人生を左右するものになったことははっきりとしている。
仁はなかなか寝付くことが出来なかったが、気分は悪くなかった。やがてゆっくりと眠りに着いた。
瞼の裏には、五山が悪鬼を退治したその瞬間が、時が止まったように映っていた。
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