*第94話 ダモン戦役
バルドー帝国とオバルト王国の連合軍がキーレント領を急襲し、
陥落させた報せが世界中を激震させながら駆け巡った。
あのダモンを敵に回した!
つまり大聖女エルサーシアにケンカを売ったと言う事だ。
始めは耳を疑い、次に両国の正気を疑い、
そして魔女の出現に世界の未来を疑った。
どちらに付くべきか?
各国の首脳達はこの数日と言うもの
寝る暇も無く会議を開き話し合っている。
現時点で明確な態度を示しているのは
バルドー側に付いたデカシーランドと
ダモンを支持するハイラムの二国だけだ。
他の国々は決めかねている。
***
「これより逆賊ダモンを討伐する!全軍に告ぐ!進軍せよ!」
司令官ロンミル第二王子の号令と共にダモン討伐軍が国境を超える。
平野部の民家はすでにもぬけの殻である。
みんな山岳部に移動済だ。
文字通りの無人の野を押し通り、田畑を踏み荒らし、
家々を焼き払い、高笑いに軍靴を響かせて行軍した。
やがて険しい坂道と視界を
山岳地帯の手前に到達する。
「さぁ!お前たちの力を見せ付けてやるのだ!
存分に働くが良いぞ!丸ごと焼き払え!」
二十五人の魔女達が凄まじい火力で木々をなぎ倒し、
山肌を炭と灰に変えて行く。
待ち伏せもゲリラ戦も無意味だ。
砲撃、放射、光子ビームの連射!
そして・・・
「おすわりっ!」
大音量の精神波~~~
「
サラアーミアだ!
「五人ってところね。」
「他は防御されたわ。」
「さすがにしぶといわね。」
「おしっこ
若草四姉妹も居る。
「精神支配は効かないわね、
すでに洗脳されているみたい。」
アルサラーラの得意技が使えないようだ。
魔女にも兵士にもテロポンが使用されている。
火力の勝負だ。
「いやぁ~ホンマに師匠そっくりやなぁ~
やりにくいわぁ~」
シモーヌとサナ、そしてリョーマン親子だ。
シモーヌは高所恐怖症を克服していた!
長男を産んだ後、不思議と怖く無くなったのだ。
「そんなん言うてる場合ちゃうで!お母ちゃん!」
「分かっとるがな~」
「母上!手加減無用です!」
「母上やてぇ~、ちょっと聞いたぁ?
なんや背中かゆいわぁ~」
「緊張感が無いわねぇ。結構ヤバイ状況よ?」
「分かってまんがな~」
「
ダモンの拠点である領都アセムは、
駆けつけたシオン率いるコイント連合軍と
ハイラムの義勇軍が守りを固めている。
五か国の意思確認に時間を取られたが、
コイントはオバルトとの同盟を破棄してダモンに味方してくれた。
そのおかげで心置きなく前線で戦える!
一進一退の激しい攻防戦となった。
***
「だいぶ苦戦しているようだね。私も行って手伝ってくるよ。」
寝台に横になっているエルサーシアの手を優しくさすりながら
カルアンが言った。
最近は体調が
持病の腎機能が悪化しているのだ。
「私も----」
「駄目だよサーシア。今は体を
それに私も父親の威厳と言うものを娘達に見せて置かないと
立つ瀬が無いからね。」
「貴方も、もう歳よ?カルアン。」
「なぁに、もうひと働きくらい出来るさ。」
挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16818093076113711851
カルアン・レイサン59歳
すでに現役を引退して数年が経つ。
さすがに老いが目立つようになった。
「じゃぁ行ってくるよ。」
「えぇ・・・カルアン。」
「なんだい?」
「早く帰って来てちょうだいね。」
「あぁ、分かっているよ。」
少しだけ弱気なエルサーシアであった。
「お父様、私も行きますわ。」
ずっと付き添いで看病しているリコアリーゼ。
妹たちが心配でならない。
「いや、
側にいてあげなさい。」
「はい・・・お父様。お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
「あぁ、行ってくるよ。」
久し振りに袖を通す仮面の忍者衣裳。
ビシッと気が引き締まる。
お腹も締まる。
「ちょっと太ったかな・・・」
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