*第34話 キューピーハニー

いきなりだった・・・

声を掛けようと近づいた途端に、地面に叩きつけられた。


おごっ!ズドン!

痛ってぇ~!

何だぁ~?


ウゴォー!この野郎!ウゴゴー!変な術を使いやがる!

魔法を発動しながら近づいて来たから

大型化したサスケが取り押さえたのだ。

問答無用である。

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330667280746593


「サ、サスケ!どすたべが?」

ウゴッウゴゴッ!こいつ妖しいよ!

「申す訳ねだな、オラにゃ分がんね。」

さすがに動物精霊の言葉は理解できない。


「アリーゼ様さ呼んで来るべさ。」


*****


とんだ誤算だ!

こんな凶暴な奴らだとは思わなかった!

まだ一言もしゃべって無いのに!

ニコニコしながら近づいただけじゃねぇ~か!


するか?普通。


いや確かに悪意はあるよ。

それは認めるよ。

似顔絵を描きながらめちぎって、

仲良くなったら絵のモデルに誘って、

アジトに連れ込んで薬漬けにして・・・


今まで失敗した事は無かったのに!

なんだ!このでかい猿は!

さっきまで肩にちょこんと乗っかってた白い小っこいやつか?


そんな精霊がいるのか?

契約者の指示も無いのに自発的に行動するなんて反則だろ~!

自由意志を持っているのは人型精霊だけの筈じゃねぇのかよぉ~


ヤバイよ、ヤバイよ~!

聖女が来たよぉ~。

長女のリコアリーゼだよぉ~。


あいつもかなり危ないんだ。

7歳でニャートンの戦艦をボコボコ沈めてたからな。


とにかく大人しくして置こう。


******


「まぁ!どうしましたの?」

ウガ!ウゴウゴウゴ!シオンを襲おうとしたんだよ!

取り押さえた経緯をサスケが説明した。

光学系の魔法で容姿を偽り接近した時点でアウトだ。


「そう、シオンに悪さをしようだなんて、

そんなに死にたいのかしら?」

目が吊り上がっている。

怒っている証拠だ。


「ま!待って下さいよぉ!

なんの事ですかぁ~!私は画家です!

そちらのお嬢様が余りにも可愛らしいので、

絵のモデルになって欲しかっただけですよぉ!」


可愛ぇらすだばめぐせでやぁ~可愛いだなんて恥ずかしい~

「ウブですわねぇ~シオンは。」


「誤解なんですよぉ~もう諦めますからぁ~

許してくださいよぉ~」


「城に連れて行きますわ。」

ウゴッ!了解!

「ちょっ!話を聞いてっ!」

「ハニー、縛り上げて頂戴な。」

「はぁ~い。」


「話を聞けよ!あ、いや、聞いてください!」


********


うぅ~・・・ギリギリギリ~

ふぅ~ギリッふぅ~ギリッふぅ~ギリッ

おふっ・・・ギリリリリリ

うぅぅぅぅ~~~ギシィィィ~~~


で、この状況である。

「洗いざらい、お話しなさいな。」


私は、うぅ~ギリリリリリ

只の~はぁ~ギリギリギリ

画家ですぅ~うぅ~ギッギッギッギッ


「ハニー、お願いね。」

「はぁ~い!任せてぇ~」


キューピー形態クイ~ンスペシャルの

嬢王じょうおう様ハニーがむちうならせる。


「この薄汚いブタがぁっ!ビュン!

ぎゃぁぁぁ~~~!バッシィ~~~ン!


「さぁ、見ていてもつまらないから、私達はお茶にしましょうね!」

「だ、大丈夫だべか?」

「こういうの得意なのよハニーは。」

んだのが・・・そうですか・・・


「嬢王様とお呼びっ!!ギュウン!!

あぎゃぁぁぁ~~~!!ビイッシィ~~~ン!!

「あはははははは!」


怖い・・・

ハニー怖い・・・


********


「はぁ~良が香だべなぁ~」

「カモミールとレモンバームよ。」

「ハンブテーだべな。」

「落ち着くわねぇ~」


暦の上では秋なのだが、

ムーランティスでは四季を味わう事は出来ない。

その代わり一年を通して色とりどりの花を愛で、

午後のひと時を中庭で微睡まどろむ。


「そろそろ頃合いですわね。」

あれから四刻程が過ぎた。

もう充分だろう。


部屋の中では四つん這いのタラルにハニーがまたがり、

お馬さんごっこをしていた。


「ほら!しっかり歩きなさい!」

ひひぃ~ん!ビシッ!


「調教は終わったの?」

「うん!完璧だよぉ~」

ひひぃ~ん!ビシィッ!


タラルはハニーのしもべとなった。


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