*第7話 ダモンの城

オバルト王国では”北方の英雄”と称され、

コイント連合国からは”南の壁”と呼ばれる。

それがダモンの一族である。


肩書は”ログアード辺境伯”であるが、

誰もが畏怖の念を込めて”ダモン”と呼称する。


シオンが保護されているのはダモンの都アセムに在るログアード城。

その客室である。

エルサーシアからシオンの保護を任されたリコアリーゼは、

ゲートを使ってログアード城に移動し、御庭衆に探索と確保を命じた。


”ゲート”とはエルサーシアの固有魔法で、

二つのゲート間の距離を”存在しない”と設定するものだ。


要するに瞬間移動である。


ケイコールの手紙はパタオパンから発送されていた。

何故もっと早く出さなかったのか?


忘れていた・・・

シオンは結構なうっかり屋さんなのだ。


御庭衆がパタオパンに向かう途中で追手に捕まりそうなシオンと遭遇し、

直ちに保護しようとしたが、事故が起きてしまったと言う訳だ。


「そんですたかぁ」

「御免なさいね、もう少し早く見つけてあげれば

怪我をせずに済みましたのに。」

「め、滅相めっそうもねですだ!命が有るだば

”夢の聖女様”のおかげですだ。」


”夢の聖女”とはリコアリーゼの称号である。

二女のサラアーミアは”愛の聖女”、

三女のアルサラーラは”情熱の聖女”と号されている。


「アリーゼと呼んで頂戴な。

お母様のご友人の娘御むすめごですもの、私達もお友達ですわ。」


「お、お、怖れ多いですだぁ。」

「友人ですから助けますのよ?違うのならお断りしますわよ?」

「そそそんなぁ~」


「さぁ!どうしますの?」

「ゆ、友人でお願ぇしますだ。」


「母御殿の手紙には貴方の保護しか書いてありませんでしたけれど、

事の成り行きから思うと、ご実家にも災難があるのではなくて?」


「んだす、オラ心配で心配でぇ

ううううううう~~~」


「まぁ!泣かないでシオン。私にお任せなさいな!」

「アリ~ゼ様ぁ~~~」


「その子がシオンですね。」

ルルナがやって来た!


「あら、ルルナ。貴方も手伝って呉れるの?」

「えぇ、ハニーだけでは頼りないですから。」


「えぇ~酷~い~私はやれば出来る子ですよぉ~」

「有言実行でお願いね。」

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330665107278443


数か所の骨折と全身打撲。

当分は動ける状態では無い。

シオンはこのまま城で静養させる。


リコアリーゼと契約精霊ハニー。

そして村長と面識のあるルルナでウーグス谷に向かう事となった。


「あんのぉ~」

「あら何ぁに?」

「追手の若衆ん達どすたがや?」


「聞きたいの?」


「・・・んにゃえがす。」

「その方が良いわ。」


ダモンは敵対者に一切の容赦をしない。

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