その六、ルリシラ、ぼやくのこと
あーあ、まーた女将さんお持ち帰りされちゃった! まったくもう!
洋行帰りの船がくるといっつもこうなんだから。早引けするのはいいけれど、少しは反省してほしいもんだわ。まったく。
え? あぁ、こっちの話。気にしないで。
いやね、うちの
そ、簡単に色男の客に惚れこんじゃうのよ。
ご本人は遊びに連れだしたつもりなんだけど、遊ばれてるのは――
そっ、その通り。
あの人、最後に自分が泣きを見るんだって事、いつまで経っても骨身に染みないみたいでさ。
ほーんと、やんなっちゃう。
今度だってきっと、船の停泊がおわってさぁ、出発って時に、港で泣きの涙で見送る羽目になるんだから。大抵、あの人がのめりこんで終わるのよ。
そっ! それでしわ寄せはみーんなあたしたちの方よ。
五日くらいは落ち込んだまま仕事に身が入んないまま終わるからさ。いい迷惑よほんと。
え? あたし? いやぁょ。そう言うのは。
あたし、仕事と恋は分けて考える主義なの。お誘いだったら別を当たってくださいな。うふふ。
でも、どうなの? あんたたちもこのまま呑み明かして終わりなの? どっか行かないの?
あぁ、辻売り狙いで行きたいのね。でも、辻売りって外れるときあるじゃない。
そうよね、けっこう案内本て裏側でいろいろとつながってたり、そもそもでたらめ書いてたりしてるなんてのもあるからね。
そうね、あたしだったら力衆の詰め所に行って紹介してもらうわね。
力衆の旦那方だったら、辻売りの売り姫さんたちの良し悪しは知ってるし、やばいの紹介すれば花街の評判を下げるっての分かってるから、聞いて損はないわよ。
そうねぇ、この辺だったらマルキムの旦那なんかはどう? この店出て通りを西に少し行ったところに緑風会の詰め所があるからそこにマルキム・ルダって力衆の若頭がいるから話し聞いてみなよ。
あ、そんときうちの店とあたしの名前だしてもいいよ。その方が話がわかりやすいからさ。
そうかい、じゃ、気をつけてね。
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