第26ワ ダークエレファント。
「ッ痛てて……ん? なんだここは?」
だいぶ広い空間のようだが……、広すぎて全体が分からんな、
『
よし、これで……! なんだこの大量の死骸は!? 死骸の山じゃないか、人間、骸骨、魔族、墓地だったのかここは?
いや、だがそんな雰囲気でも無いな、無造作に放置されている事から、おそらく誰かがここに運んだのだろう。
しかし、コレは大きな手掛かりだ何かヒントを掴めるかもしれない。
「ん? コイツは……」
この死体の顔はどこかで……! コイツは酒場でバドラに絡んでいた奴ではないか!?
何故こんな所に……、それによく見れば周りに転がっている亡骸には様々な国の兵士も混じっているな。
「これは徹底的に調べ」
魔王がそう口にした瞬間、大量の死骸はアンデットと化す。
そして、アンデットの大群は魔王に群がった。
「く、クソ! 離れろ! 『ブレイズファイヤ』」
魔法で引っ付いていたアンデットを焼き払うと、一度距離を取り構える。
『ファイヤノヴァ』
炎の海がアンデットを襲う、しかし数が多すぎて一度では倒しきれなかった。
「クソ! いったい何体いるんだ『ファイヤノヴァ』」
これで全部か。一体くらい調べるために残しておけばよかったな、
……もしかして、王宮にいる奴と関係あるか? それなら王宮にいる奴を調べれば、
なら戻るか、剣聖にも訊かねばならぬ事があるしな。
魔王はそう思うと、崩落した穴から出るため飛翔の魔法を使おうとした。
しかし、魔王は動きを止める。何故なら地響きと共に奥の壁が崩落したからである。
「な、なんだ!?」
魔王は身の安全を確保しつつ、崩落した壁に視線を向けていた。すると穴があき、中から巨大な魔獣が姿を現す。
「
何故こんな所に? まあいい、さっさと倒して街へ戻ろう。
ダークエレファントとは鋭い爪と巨大な牙が特徴の魔獣である。
『
魔王は魔獣を沈黙させるため魔法を放った。本来ならこれで致命傷となり倒せるはずだった、しかし魔獣は魔法を喰らっても活動を続ける。
「クソ、こいつもアンデットか」
そう呟くと、魔獣の鋭い爪が魔王を襲う。
危っぶねぇ! 一発でも喰らったらいくら鎧を着けていてもただでは済まないな。
『ファイヤノヴァ』
だがこれで、終わりだ。なにっ!?
ファイヤノヴァを喰らった魔獣は、骨だけになり魔王に突進してきた。
クソ、骨太すぎて骨までは焼き払えなかったか、どうやら物理的にダメージを与えなくてはコイツを倒すのは難しそうだな。
一発どデカいのをお見舞いしてやりたいところだが、それをやればここの空間ごと吹き飛びかねないな。
「面倒くさいやつだ」
魔王は魔獣の攻撃を
そして、その時は壁際まで魔獣を誘導し、突進してきた時に訪れた。
「よし、ここだ! 『
突進してきた魔獣を寸前で躱すと、魔獣はそのまま壁に突っ込み、魔王の放たれた魔法の衝撃も相まって、崩落した壁の残骸の下敷きになった。
「手こずらせやがって」
さっさと戻るか。
そう思い魔王は洞窟を後にした。
魔王が宿に戻ると、一階の受付にいる店主が声を掛けてきた。
「お帰り、だいぶ時間が掛かったな。やっぱシェルリザードは手強かったか?」
「いや、そうでは無いのだが、ちょっと色々あってな」
店主が首を傾げたが、魔王は気にせず続けた。
「それより連れはどこにいる?」
「ああ、二階の剣聖様が寝ている部屋にいるよ」
二階に上り部屋をノックする。どうぞと、応答があったので中に入る。
「バドラよ、取ってきたぞ」
「ありがとうございます。それでは直ちにお作りしますのでお待ちください」
バドラに素材を手渡すと、彼女はソレと既に用意してあったエビルバードの爪をすり鉢に入れ、すり潰しはじめた。
「バドラ、お前薬を作るのが得意なのか?」
「はい、魔法の方はあんまりですが、薬に関しては少し腕に自身があります」
そんな事を話していると薬が出来たのか、声を掛けてきた。
「マオ様、完成致しました。今すぐ飲ませますか?」
「ああ、頼む」
「畏まりました。処方後、二、三時間で目を覚ますと思いますので、頃合いをみて部屋に戻ってきてください」
「分かった」
──三時間後。
男は目を覚ます。
辺りを目回すと、顔色の悪い色白の男と、無表情の黒髪の女が私を見下ろし立っていた。
ここはどこだ? 私は何故ベットで寝ている? 思い出そうと記憶を辿る。
確か、あの男の酒を確保するため酒場に行きマスターに断られ……、この二人は誰だ? そういえばマスターと何か話してた奴がいたな……ダメだ思いだせん。
「お目覚めか?」
「誰だ貴様は?」
「我の事はどうでもいい。それよりお前に訊きたい事がある」
何なんだコイツは。剣聖である私に取る態度では無いな。
「なんだ?」
「お前が魔王を倒しに行ったと聞いた。それで魔王城には行ったのか?」
「なんだ貴様も、私を批難しに来たのか?」
「そうでは無い。いいから答えろ」
失礼な野郎だ。まあでもしょうがないか、私の名声も地に落ちたようなものだ。
「魔王城には、行っておらん。これで満足か?」
「そうか。ならもう一つ答えろ。どうせこの後会いに行くつもりだが、お前を阻んだ奴とはどんな奴だ?」
「世界を新たに支配しようとする者だ」
「なんだと?」
剣聖はそう答えると、突然顔色が悪くなりガタガタと震え辺りを見回す。
「どうした?」
「お、おい! 今は何時だ!?」
「四時過ぎくらいじゃないか? それがどうした?」
「そうか…」
魔王の答えに剣聖は一旦落ち着きを取り戻すが、少しすると慌てた様子でベットから起き上がり部屋を出ようとした。
「待て、どこへ行く?」
「うるさい、手を離せ! 早く酒を確保しなくては私は奴に殺される!」
「殺される? 誰にだ?」
「今話した男にだ!」
よほど危険な奴のようだな、それなら尚更会わねばならんな。
魔王はそう思った。
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