第24ワ 王宮へ。
「一つ確認したい事がある」
「何だ?」
「貴様は、魔王の部下ではあるのだろ?」
「何言ってんだお前? そんな訳ねぇだろ」
魔王で無ければ、部下でも無いだと? 何者なんだコイツは? あの強さから考えて、普通の人間では無いと思うが、どう頑張って見ても、小汚いおっさんにしか見えん。
……ああ、なるほど、そういう事か。
「魔王直属では無いという意味だな? 私の訊き方が悪かった」
「だから違えって言ってんだろ! 魔王の部下どころか、一切関係ねぇよ!」
じゃあ、何だと言うんだコイツは! 嘘を付いている? ……いやそんな雰囲気では無いな……………ハッ! まさかコイツ!?
「き、貴様! まさか新しく世界を支配しようと企んでいる者か!?」
「さっきから何言ってんだ? そんな、面倒くせぇ事する訳ねぇだろ」
「では、何故あんな所に住んでいる?」
「てめぇには関係ねぇ。もういいだろ、お前は退いてろ、俺はそこの王に話がある」
この男の正体はいったい? ……くっそ、何者かは知らんが、放って置くのは危険だ。
私がこの国の王となる計画以前に、こんな者を野放しにしていたら世界その物が危ない。
レッドナートはそう思うと、後ろで顔を押さえ悶絶している王に声を掛ける。
「王よ、一つお願いがございます」
「な、なんだ?」
「剣を貸して頂けないでしょか?」
「分かった、何でもいいからこの男をなんとかしてくれ!」
レッドナートは、王から剣を受け取ると構える。
「何だ、やる気か? 俺には勝てないと分からなかったか?」
「確かに私では勝てないかも知れないが、このまま貴様を野放しにする訳にもいかない」
「なんだ、お前も俺の正体を知っていたのか」
「貴様がさっきから何の事を言っているのかは知らんが、私は人類の脅威に立ち向かわねばならん」
レッドナートは、おっさんの間合いに踏み込むと剣を振るう。
「はぁぁぁ!」
怒涛の攻撃におっさんは人差し指一本で対応した。
まるで剣と剣がぶつかる様な音が室内に響く。剣と指、どう考えてもあり得ない衝突音だ。
「はぁ、はぁ」
「満足か?」
「ここからが本番だ!」
「いや、もう終わりだ」
おっさんは音を置き去りにする拳を放つ。
レッドナートの腹部にめり込んだ拳は、彼の内蔵を破壊し、体を後ろに吹き飛ばす。
「レ、レッドナート!!」
「……………」
王の呼び掛けに彼の反応は無い。
唖然とする王の前におっさんは、歩みを進める。
「俺を倒そうだなんてもう考えない事だな。さあ、早く居場所を教えた奴を言え」
「ひ、ひぃぃぃい! く、来るな!」
王は後退りしようと身体を動かすが、腰が抜け思うように身体を動かせない。
おっさんは王の側にしゃがむと顔を近づける。
「他に、同じ様な事を考える国が出ないためにも、居場所を教えた奴を言え」
「な、何の事だ、私は魔王を討伐しろと命じただけだ、何の事を言っているんだ!?」
「ん?……どういう事だ?」
王は事の経緯を説明した。
「じゃあ、何故アイツは俺を攻撃してきた?」
「そ、それは知らん。レッドナートに聞いてくれ」
王はおっさんと話をしていく中で、モヤモヤと何か疑問の様な感情を感じていた。
そして、その疑問を思い出した時、王は底知れぬ恐怖を感じる。
「そ、
「あァ? 何だ?」
「わ、私は何も知らなかったんだ! 許してくれぇぇ!」
王は怯えた様子で釈明すると、走って部屋を出ていってしまった。
「まあ、いいか。アイツ(レッドナート)が起きるまで待つか」
──そして、現在。
魔王は扉を開ける、すると宿屋の店主が気付き顔を向ける。
「お帰り。用事は済んだかい?」
「ああ、ところで連れは起きてきたか?」
「いや、まだ見てないな」
「そうか、分かった。ついでなんだが王宮の場所を教えてくれないか?」
魔王は店主に王宮の場所を聞くと、二階に上り連れの部屋をノックする。
「バドラよ、起きてるか?」
はい、どうぞお入りください。と言うので魔王は扉を開け中に入る。
廊下を進み、部屋に入ると、魔王はベットに座るナイスバディな裸体が目に入った。
「な、何故お前は服を着ていないんだ!?」
「申し訳ございません。入浴をしていなかったので、身体を拭いていました」
「なら、服を着てから部屋に呼べよ!」
「はい? 分かりました。では、少々お待ちください」
羞恥心がまったく無い様子のバドラは、衣服を身に着けると、何故か顔を逸らしている魔王に声を掛ける。
「魔、マオ様。衣服の装着を完了いたしました」
服を着たと言うので顔を向けると、そこには黒いキャミソール姿が立っていた。
「お前なぁ……まあいいや。それと二人の時は魔王呼びでいいぞ」
バドラは首を傾げると「畏まりました」と答えた。
「それより、今から王宮へ向う。宿を出る準備をしておいてくれ。準備が終わったら一階で待ち合わせだ」
「畏まりました」
魔王は一度自分の部屋に戻り、諸々の支度を済ませると、一階に降りバドラを待つ。
「店主よ、一つ頼みがあるのだが?」
「なんだい?」
「馬を少し預かっててもらえないか? もし金銭が必要なら支払う」
「ああ、分かったよ。それとお金は取らねえよ」
「そうか、助かる」
魔王と店主がそんな会話をしていると、階段を降りる音が二人の耳に入る。
「魔、マオ様、お待たせ致しました」
「そうだな、我はマオ様だな」
「はい、その通りです」
「それじゃあ、行くか」
二人は王宮を目指し宿を出た。
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