第12ワ 手掛かりは……。
魔王とネロは、城の者に案内され、とある一室に入った。室内に入ると中は、酒の空瓶や何かの資料らしき物などが床に散らばっていた。
そして部屋の奥の方に目を向けると、銀髪頭が机に突っ伏して、イビキをかいているのが目に入った。
「おい、アロス起きろ」
「……んっ……うーん………」
反応が無い。魔王は声を張り上げた。
「起きろ!! アロス!」
「わ!@#!?」
突然の大きな音に驚いたアロスは椅子から転げ落ち、眠い目を擦り音のしたほうに目を向けた。
「なんだ、なんだぁ?……」
「……おはよう。よく寝れたか?」
「…………ま、魔王様!?」
魔王はビックリして何やら混乱している様子のアロスを無視して口を開いた。
「アロスよ、今日はお前に聞きたいことがあって来た」
「な、なんで魔王様がここに!?」
「それを、今から話すから落ち着け」
「あっ! あれッスか!?」
立ち上がり落ち着かない様子のアロスは、魔王の声を無視して、慌ただしく机に散らばっている資料をまとめあげ、魔王の前に見せた。
「じ、実は明日あたりにお訪ねしようかと思ってたんッスよ」
「……なんだ、これは?」
「へっ!? ああ、領地の地形と領民の資料ッス」
「いや、今日はその事ではなくお前に聞きたいこ」
まだ落ち着かない様子のアロスは、魔王の言葉を遮って釈明しだす。
「い、いや違うんッスよ! 俺も、いろいろ忙しかったっていうか、本当は早く伺いたかったんすッけど、なかなか時間取れなくて」
「落ち着け、俺は話を聞きに来ただけだ」
「も、もしかして四天王クビとかそっ」
魔王はアロスの言葉を遮って声を張り上げた。
「落ち着け!!」
「ッ!」
「今日はお前に聞きたい事があるから来ただけだ。クビとかそういう話をしにきたんじゃない」
「ほ、本当ですか?」
「ああ、だから聞け」
そう言われようやく落ち着いた様子のアロスを見て、魔王は今日来た理由を話しだした。
「先日、俺の城でアンデットが大量に地中から這い出てくるといったことがあった」
「どういう事っすか?」
「まあ、とりあえず聞いてくれ」
「はい。?」
そして、アロスは魔王城で起こったことを一通り聞かされ疑問を口にする。
「んー、そんな川ありましたっけ?」
「いや、お前の領地にある川だぞ」
「うーん……」
腕組みをして思い出そうとするが、記憶に無いことはどうしようもない。そこでアロスは赤髪の女性を頭に浮かべた。
「ちょっと待ってて貰っていいっすか?ラミを呼んでくるんで」
「……ああ、分かった」
そう言ってアロスは、ラミを呼びに行こうとしたが、魔王の側にいる少年を発見して声を掛けた。
「あれ! ネロ君じゃん! ひっさしぶりー」
「どうも」
「なんだー、居るなら居るって言ってよー」
「いいから早く呼んでこい!」
魔王の怒鳴り声を聞いてアロスは慌てて部屋を出ていった。そして、魔王は額に手を当て、ため息吐く。
「はぁ、アイツと話してると疲れる」
そして暫くの後、アロスがラミ連れて戻ってきた。
「ま、魔王様お久しぶりです」
そう言ってラミはお辞儀をした。
「おう、久しぶりだな。今日は少し聞きたい事があって来たのだが」
「はい、なんでしょうか?」
魔王はさっきアロスに話した事をもう一度ラミに話した。
「ということなんだが、何か知らぬか?」
ラミは顎に手を当て口を開いた。
「んー、そうですね…………申し訳ございません。特に不審な者や、そう言った舟などの目撃情報と言った物は私の耳には入ってきて無いです」
「うーん。そうか……」
「申し訳ございません。お力になれなくて」
魔王は深くため息を吐き、額に手を当て近くにある椅子に座った。
「うーん、これではどうしようもないな。……そもそも目的が分からん、城を攻めるにしても弱いアンデット共をわざわざ使った意味も不明だ」
すると魔王の独り言を聞いていたアロスが口を開く。
「魔王様もしかして誰かに恨まれてるんじゃないッスか? ザレンさんとか、まだ魔王様のこと認めてない感じじゃないッスか」
その言葉に魔王は、首を振り否定した。
「いや、確かにザレンは俺の事を認めていないが、こんな回りくどいやり方はしない。あいつは文句があるなら直接来るタイプだ」
「……それじゃあ人間とかじゃないすっか?」
「それも無いだろ。そもそもアンデットを操れる人間など聞いたことも無い」
そう言うと魔王は「ふぅ」と息を吐きラミのほうに顔を向けた。
「ラミよ、悪いんだがコーヒーでも淹れてくれないか?」
「はい。すぐにお持ちします」
──魔王城よりおよそ西に200メートル地点。
「お前ら分かっているな?」
「はい、レッドナート様。我ら二人は城門破壊後、城内の雑魚共を殲滅した後、レッドナート様と戦っている魔王の隙を突き攻撃を仕掛けます」
「よし、それでいい。この魔王討伐には我が国の命運が掛かっている。失敗すれば死と考えよ」
「「はっ!」」
作戦の確認をして魔王城に向かっていた三人。そんな中、その内の一人が100メートルほど先の物に目を留める。
「見てくださいよ、レッドナート様」
部下の指差すほうに目を向けると、そこには民家らしき建物が立っていた。
「こんな所に民家が立ってますよ」
「ほう、もしかしたら魔王城関係者の家かもしれんな」
「どういたしますか?」
「……そうだなあ、もしかしたら魔王に関する有益な情報を持っているかもしれん……よし、では調べてこい。もし口を割らないようなら拷問してもよい」
「はっ!」
レッドナートの指示を聞き民家に向かう部下。しかし、レッドナートを含めこの三人はまだ知らない。この民家には魔王より恐ろしいおっさんが住んでいることを。
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