第35話
アリスは最初は緊張していたが、ブルーノとの暮らしに徐々に慣れていった。
「ブルーノ様、お風呂はどうしましょうか?」
「ああ、町には公衆浴場があったが、この体では行けないな……。川で体を洗うさ」
「いけません! 風邪を引いてしまいます!」
アリスは少し考えてから言った。
「庭の隅に、木でお風呂を作りましょう!」
「……それはありがたい」
アリスとブルーノは庭の隅に木製の風呂を作り、お湯を入れた。
アリスは風呂が外から見えないように置いた、衝立の外からブルーノに話しかけた。
「ブルーノ様、お湯加減は大丈夫そうですか?」
「ああ」
ブルーノは風呂の中に手を入れると、にっこりと微笑んだ。
「アリスさんは……外でお風呂に入るわけにはいかないな……」
「ええ、気持ちよさそうですけど。私は町の浴場を使わせて頂きます」
「その時は町まで送りますよ」
「ありがとうございます。ブルーノ様」
一人で暮らしていたアリスだったが、ブルーノと一緒に野菜を収穫したり畑を耕したり、獣をとったり料理をしたりして過ごす日々は楽しかった。
ブルーノは朝と晩に剣の稽古をしている。アリスはそれを見ながら食事の準備をした。
ブルーノとたわいのない会話をしながらとる食事は、アリスにとってもブルーノにとっても幸せな時間だった。
平和な日々は続き、あっという間に一週間が経過した。
しかし、ある朝、兵士がアリスの家を訪れ和やかなときは終わりを告げた。
「アリス様とブルーノ様はいらっしゃいますか?」
「はい」
アリスは急いで玄関のドアを開けた。
「……」
ブルーノは顔まで布を巻き、目だけが見えるようにした。
「ブルーノ様、アリス様、フォーコが復活したとのことです。レイモンド王子が早急に手を打って欲しいと……」
ブルーノは眉間に皺を寄せた。
「やはり、か。レイモンドも簡単に言ってくれるな……」
「ブルーノ様……行きましょう」
「ああ」
アリスとブルーノは王宮に向けて旅立つ準備を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます