第33話

 アリスとブルーノは、エルバの森のアリスの家に着いた。


「ブルーノ様、どうぞお入り下さい」

 アリスはドアを開け、ブルーノを家の中に案内した。

 ブルーノは新しい住処になる、アリスの家をゆっくりと見回した。

 綺麗な台所の隅には、野菜や調味料が並んでいる。


 台所の反対側には大きなテーブルと、アリスの家を訪れたときに座っている椅子があった。 いつきても居心地の良い場所だと、ブルーノは安心した。

「これからよろしくおねがいします。アリスさん」

 ブルーノはアリスに頭を下げた。

「こちらこそよろしくおねがいします。ブルーノ様。どうぞ、お好きにお座り下さい」

「ありがとう」

 ブルーノは大きな机のわきに鞄を置き、椅子に腰掛けた。


「アリスさん……」

「はい、何でしょう?」

 笑顔で振り向いたアリスに、ブルーノは申し訳ないという様子で伏し目がちに言った。

「明日以降で良いのですが、エルバの町に置いてある荷物を取りに行ってくださいませんか?」

「……ああ! そうですね。分かりました」

「待ちの入り口までは一緒に行きます」

 ブルーノは脇に置いた鞄から、ペンと紙を取り出して手紙を書き始めた。

「ちょっと待っていて下さい、アリスさん」


 ブルーノは手紙を書き終えると、アリスに金貨と一緒に渡した。

「エルバの町の宿代と、今までお世話になった事への礼状です。あとは、荷物をアリスさんに渡して欲しいということを手紙に書きましたので……これを宿の主人に渡して頂けますか?」

「はい、分かりました」

 アリスは笑顔で受け取ると、早速エルバの町に向かって出発しようとした。


「ああ、アリスさん。今日は疲れたでしょう? 明日で大丈夫ですよ」

「でも……今日から二人分の食事が必要になるでしょう? 買い物もしたいし、ついでですから今から宿屋にも顔を出そうかと思います」

 ブルーノは頬をかいて、苦笑いをした。

「それでは、一緒に町までいきましょう。私は町の外で待ちます。宿屋に置いている荷物は、旅行鞄一つ分くらいですが重いですよ?」


 アリスは胸を張って笑顔で答えた。

「大丈夫です。私、こう見えて力持ちなんです」

「……分かりました」

 ブルーノもつられて笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る