第二十三話

数分経つと、「解説終了。」の文字が流れた。

「終わったよ。」

 偉炎は自分が一通りの説明を見たことを切風に報告した。

「よーし、一通り終わったね。では・・・」

 切風も偉炎が全て見終わったことを確認した。そして、どうやらまた新たな段階に入るようだ。

しかし次の途端、切風の行動は偉炎の想像をはるかに超えた。なんと彼女は猛烈なスピードで偉炎の方に歩き始めたのだ。その速さは走っていないにもかかわらず、もはや男子の全力疾走に匹敵していた。そして、一瞬で手前一メートルまで近づくと艶やかな緑色の髪を手でかき分けながら彼女いない歴=年齢のなんとも情けない偉炎の耳元で呟いた。


「私が体の使い方について教えてあ・げ・る。」


「えっ、何?」

 近づいてくる切風に偉炎は緊張した。これには二つの理由がある。一つは自分が何をされるのか分からず焦る緊張、もう一つは女性が近づいてくることに対する男の本能としての緊張だ。偉炎は普段からあまり人と話さない。仮に話すとしても男性であり、女性とはほとんど話さないのだ。(ちなみに彼が一番話す相手が女性でその正体が母親というのはかなり残念な話だ。)

 そのため女性が近づいてきた場合の対処法を偉炎は持ち合わせてなかった。切風が発する声とともに出る息の温もりを偉炎は耳元で感じる。

(やばいやばい!)

 もしかすると今の偉炎は拳銃を発射してしまった時よりも動揺しているかもしれない。しかし、少し考えてみて欲しい。切風はおそらく四十歳前後と予想される。つまり年齢としては自身の母親と大して変わらないのだ。普通なら年配者として受け答えをするだけである。しかし、切風の場合はそう簡単にもいかない。年齢に比例にないあどけない容姿、魅力的な体の膨らみ、可愛げな身長に加え、無邪気な活発さを見れば冗談抜きで二十歳前にしか見えないのだ。なんなら偉炎は初めて見た時、年下であると確信していたほどである。そんな女子みたいな人が急速に近づいてきたら、異性とほとんど関わりのないチェリーボーイには色々と引き締まるのも仕方ない。

「な、何するの??」

 偉炎は距離を置くため少し後ずさりした。緊張しているのがバレバレだ。にもかかわらず、切風は偉炎の目の前に立ちそっと顔を近づけた。

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