第十九話

しかし今回、偉炎は強引に心に浮かんだ負の感情を抑えることに成功した。それはわずかではあるものの希望ができたからだ。当然のことだが切風叶は奇人である。偉炎もそこは第一印象として理解していた。しかし、それと同時に偉炎は切風のことを「出来る事が多くある人間」として彼女のスペックを評価していた。それは偉炎から拳銃を取り上げた時の運動神経や、偉炎に向かって放った殺気などがそれを証明している。そして、偉炎は無意識にこの一件ももしかしたら切風が何とかしてくれるのではないかと期待してしまっていた。切風の言う通りに行動すれば、つまり赤虎組の連中を殺して切風の信頼を勝ち取ることができれば本当に拳銃の件を隠蔽することができる、そこに偉炎は未来を見出していた。

 偉炎は切風の説明を理解した上で質疑を始めた。

「わかった、ただ、なんで赤虎組が標的かを教えてほしい。」

「うーん・・・いいよ!今回は特別にね♡」

「・・・」

ちなみに偉炎は切風のこういう態度にはできる限り無反応で対応しようとも無意識に決めていた。

切風が答える。

「それではお答えしよう!今日これから体育館で入学式があるのは知っているよね?あっ、もちろん君は欠席ね。」

(あんたが来てなかったら僕も参加していたけどな!)

切風は続けた。

「そこに参加する一年生に四大財閥の一角、王電家の御曹司がいてねー。どうやら赤虎組は彼を誘拐もしくは人質にして大量の身代金を取ろうしているとの情報が入ってね、それで今回の標的になったわけ。」

 どうやら赤虎組の裏の顔がついに表に出ようとしていた。

「そんな大胆な行動していいのか。赤虎組たちは。」

「もちろんどこの組織の犯行かは分からなくするだろうね。だから組の中で何の権限も与えられていない、一番雑魚であるチンピラが実行犯になったってわけ。」

「なるほど。」

「とりあえず、君はそいつら倒せばいいってことよ!」

「・・・」

 偉炎は納得していいのかダメなのかはわからないが、これからそいつらを殺めなければならない事だけでは分かっていた。

 しかし、ここで問題になるのが作戦である。

(おそらく切風にはすでに計画はあるのだろう。そうでもないと僕が屋上にいるわけがわからない。)

実際に、この屋上にはもともと設置されていた太陽光システム以外にもいくつかの透明なロープみたいなものや中に何が入っているか分からないバックなどが置いてあり、すぐにでも何かが起こりそうな雰囲気ではあった。

「はーい。それでは次に作戦の内容を発表するねー。」

偉炎が作戦について気になっているのに気づいたのか、切風が楽しそうに作戦について語り始めた。

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