第十四話
そして偉炎は気づいてしまった。残された道のどちらかを選択しても、普通が戻ってこないことを。一つは拾った拳銃を使って、人殺しを遂行し、かりそめの普通を手に入れること。もう一つは拳銃所持で警軍に捕まり、その後社会に復帰して欠陥の普通を手に入れること。どの道地獄だ。高校生とは言ってもまだ子供。そんな彼に残された道としてはあまりに残酷だった。
偉炎は右手を頭の額に当てた。
(これは本当に現実なのか・・・)
しかし、そんな現実逃避みたいな気持ちは世間において何の効果も持たない。むしろ、余計に自身の動揺を誘うだけである。その結果、彼は一種の貧血状態になってしまったのだった。
(あれ?なんか目の前が見えなくなって・・・)
偉炎は自分の視界が黒く、かすんでいることを理解した。絶望的な状況と相まって、体が肉体的にも精神的にも限界を迎えた。ARコンタクトに警告文字が出ているが読む気力すら残っていなかった。彼の瞼は閉じかけていた。そのわずかに見える視界の先では切風の姿を確認することができた。腰に手を当ててニコニコしているその姿はまるで小悪魔そのものだ。
(く・・・そ・・・)
偉炎はこれ以上何もすることができずそのまま気絶してしまった。
ただ気絶する直前、偉炎は意識が朦朧とするなかで、少しだけ過去の出来事を思い出していた。それは、何もしていな時(ボーとしている時)に限って過去の出来事が脳内に蘇る経験に似ているだろう。偉炎の場合、それは今朝の賑やかだった商店街のことである。
(僕が商店街で銃を拾ったとき、突然誰もいなかったような・・・)
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