第十二話

「え・・・今なんて?」

 偉炎は目を丸くして、その言葉の意味を本気で疑った。

世界は広いとだれが言ったらしいがそれは本当なのかもしれない。偉炎の前に現れたその女性はどう見ても日常で目撃しないような特徴をしている人である。一瞬であるが、偉炎は最先端技術で作られたアンドロイドではないかと本気で疑った。

 髪はミディアムロングの緑、右目が赤、左目が青、その目の覆うように白い眼鏡をつけ、スーツスカートの下に黒いタイツを穿き、白のタートルネックの上から大きな白衣を着ている。背はかなり小柄の方であるが、体つきから大人であるということは間違いない。そして、偉炎のことを自信満々に上から見下ろしている。

偉炎はここまでの情報をなんとか読み取ることができた。しかし、次にどのように行動をすればいいのか迷いが生じた。

(まずい!拳銃を持っているのがばれた!)

偉炎が危惧したのは持ってはいけない拳銃を持っていたことがその女性にばれてしまったことだ。拳銃を蹴り上げられた今、その事実を隠すことはできない。

(言い訳をするか、いや逃げるか、さもなければ戦うか、・・・)

 おそらく偉炎が思い描いた案は全て良くない。なぜなら、拳銃を頭に向けていた時点で言い訳しても変な奴に思われるし、さっき女性の接近の速さと蹴り上げる力からして身体能力は完全に偉炎が劣っている。万事休すだ。

しかし、そんな迷いはすぐに女性の方からの一言で消えた。

「いやー、君大変だったねぇーこんな朝から。まあこれからのことはこの私、切風叶に任せておきなさい!」

この女性は急に偉炎に対する評価と自己紹介を始めた。そして、自分を切風と名乗り、偉炎に救済を保障した。

「僕が助かる方法がある・・・?」

偉炎は速攻で返答した。

「そうそう!もし私がこれから言うことを承諾して決行すれば 君が拳銃を持っていることを隠匿してあげる。」

そう言いながら切風と名乗る女性は自分が蹴り上げた拳銃を拾いに行った。

 絶望的な偉炎にとって切風の言葉はまさに砂漠の中をさまよう者が見つけたオアシスだ。この状況で普通に戻ることのできる起死回生のチャンスはないだろう。偉炎はすぐに返事をした。

「ぜひ教えてくれ、お願いだ!」

偉炎は切実な気持ちも込めて提案に乗った。

「いいよーただ・・・まずは私に敬語を使わないとね。少なくとも私はあなたの倍は生きているから!」

「え!つまりオバサ・・・」

「・・・・・・」


ブオオオォォォ

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