第九話
「八時四十分・・・もう、登校時間は過ぎている。それまでにこの拳銃どうするか考えないと・・・」
偉炎は正門を通る。商店街にいた時間が予想以上に長かったため、登校時間は過ぎているものの、おかげで他の生徒はすでに教室にいるため偉炎の存在を気付く人はいない。ただし、偉炎は通る際、正門の横に立っている警備員一名に変な目で見られてしまう。始めは拳銃を持っていることがばれたと焦る偉炎ではあったものの、警備員からしてみればそんなことは想像できないだろう。確かに汗まみれでバックを隠しながら持っている様子を見れば怪しいと言われても仕方がない。しかし、広星高校は創立以降、事件は一回も起こしたことがない。内部の不祥事はあるものの、職員や生徒が犯罪行為や外部に迷惑をかけたことなどは現時点ではない。そんな安心安全の高校でまさか拳銃を持った生徒が走りながら校内に侵入するなど思わないだろう。そのため警備員は偉炎のことを「登校初日に遅れてやってきた可哀想な生徒」としてみるだけで済んだのだ。偉炎は広星高校に助けられる形で凶器を広星高校に持ち込んだ。
さて、ともかく正門を無事通ることができた偉炎。彼は次に隠れられる場所を探した。
(場所は・・・あそこがあるな。)
彼は再び走り出した。
目的地は体育館の裏の茂みである。ここは偉炎がたまに昼食を食べる時に使う場所でクラスの声がうるさい時、普通でいるためにこの静かな場所までわざわざ移動して昼の休憩を謳歌する場所である。普通の生徒がこんなことをするはずがなく、どうみても異常であるが、今のこの異常な場面でそれが役に立った。つまり、この茂み付近は人にあまり見かけられず、一人で静かにいられる場所、つまり偉炎にとってここはベストプレイスなのだ。まさかこんな形で救いになるとは本人にも予期していなかっただろう。
目的地に向かう途中、偉炎は出来るだけ人と見つからないように少し前のめりになって走った。特に校舎付近は要注意。そこには進級した二年生と三年生がいるとともに新入生もいる。つまり校内の九割がいるのだ。証拠に二階の教室から男子生徒数人の大きな声が聞こえてくる。
(場所からしておそらく一年生か。)
どうやら今年の一年生はわんぱくな生徒が多いようだ。偉炎と正反対に。そして、もし彼らに見つかったらと思うと偉炎はぞっとした。そのため彼はなおの事細心の注意を払って行動した。結果、功を奏したかどうか分からないが彼は無事に体育館付近にある茂みに何とか到着することができた。そして、そのまま茂みの奥に身を潜めた。
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