第六話

(マジで言っているのか!?)

偉炎の焦りが最高潮に達していた。たった二文字の言葉に偉炎は恐怖を覚えていた。偉炎がいる場所は商店街から外れた狭い道のため人を撃つということではないだろう。しかし、この拳銃から発せられる銃声は商店街の雰囲気を一瞬で切り裂くだろう。それが偉炎にとって何とも耐え難い事だった。

(この命令はかなりまずい、もしこんなところで発砲したら・・・)

それとともに、発砲後、偉炎が拘束されそのまま警軍に連行される自身の姿を想像した。まさしく最悪のケースである。

(まずいまずいまずい!本当にシャレにならない!)

 偉炎はなんとか自我を保っている頭の中でなんとか命令を拒否しようと試みた。

しかし、彼はまるでロボットのように動き始めてしまった。外から見たら洗脳されている人に見えるであろう。実際のところそうなのだが・・・。


体が動き始める。

(ダメだ・・・!!誰か助けて・・・)


右足を半歩後ろに後退させ撃ちやすい体制になる。

(なんで!なぜ僕がこんな目に・・・!)


手に握る拳銃のセーフティーを解除する。

(嘘だろ!頼む夢であってくれ・・・)


拳銃のハンマーをダウンする。

(たすけ・・・)

拳銃から鉛が出だ。


ズドーーーーーーーーン


 後で気づいたようだが偉炎はこの時、目に涙があふれていたそうだ。その姿は高校生としてはなんとも情けなく残酷であった。しかしそれは身体が動かない中で彼が見せた、せめてもの抵抗だったのかもしれない。


(撃ってしまった・・・!)

どうしようもなかった。偉炎の鼓膜が破れるかもしれない銃声が商店街中に響き渡る。このままだと偉炎は通報され、めでたく逮捕されてしまう。普通の生活ともお別れだ。

「くそ・・・!」

 偉炎は自分の行った行為を壮大に後悔した。

「なんで・・・なんでこんな目に。僕はただ、普通に生活したいだけなのに・・・」

 何もかもを諦めた。諦めるしかなかった。彼は灰のような目で空を見上げた。


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