第12話 夜の晩餐と明日の準備

 目を開けると夕暮れになっていた。あれ?昼間だったような……あたりを見回すと、猫人のアルミスが気が付き話しかけてくる。


『お、タクマ起きたね。ダイジョーブ?』

『ありがとう。 元気』

『お、言葉わかってきたね!』

『お、おう?』(最後のわからない……なんて言った?)


「あ、タクマおきたのね! 大丈夫?」

「よかった、半日くらい寝てましたよ」


「……練習してたら……気を保てなくなったよ」


「魔力が無くなっちゃうと勝手に寝ちゃったりするそうですよ。残りの魔力量を把握してないと死ぬから気をつけて……みたいなことを言われました」

「確かに……戦ってる最中に気絶したら後がどうなるかわからないな……調子に乗りすぎたよ」


「ねぇ、タクマ、コレ見て!」


 チサトさんが木の棒の先端に切れ目を入れた箇所に削った石を挟んだ後に蔓のようなものでぐるぐる巻きにした……石槍? を見せてくれた。即席で作ってもらったのだろうか? 俺はちらっと狩人たちの方を見る。何やら話し込みながら準備をしている様だ。


「凄いね、作ってもらったの?」

「うん、もの凄く硬い石らしいんだけど、魔力をまとわせて突くと鉄くらい? の硬さになるからとか? 言ってたのかな?」

「僕よりちゃんと話ししてたのに曖昧だな……」

「あたしフィーリングでやってるから訳せないの……」


「天才だな……」



「ああ、それよりあれからは……」

「あの後は魔力切れの感じ方を教えてもらって、あ、そうだ、魔力はまだ外に飛ばさない様にと言われました。魔力を飛ばすとあっという間に魔力切れになるそうです」

「なるほど……きつくない印象だったのに突然来たものな……」

「あ~それは違うと思う~タクマ、こっちきて」

「ん?」


 俺はチサトさんに連れられて先程練習していた空き地を見てみると……なんか森が切り裂かれて木が途中から真っ二つになって他の木に引っかかってしまっている。地面もえぐれて大変なことになっている。


「これ、俺がやったの?」

「ですよ、ものすごい威力ですが、魔力を気絶する分まで使ったからこの威力みたいなんです」

「死にたくなかったら真似するな! っていわれたよー」

「……そうだね、使ったら気絶するなんて博打技だなぁ……」


 このサバイバル状態では博打技なんて使ったら逃げられないし、1匹仕留めたところで敵の仲間に殺されるし……本番じゃなくてよかったな……


『タクマ、起きたか。魔力の話は聞いたかい?』


『魔力、飛ばす、ダメ?』


『お~タクマわかってる』

『それじゃみんな、これからの簡単な予定を話すよ』

『あした、やること、言う』


「アルミスの言うことはかわるようになってきたな…」

「俺はあんまりまだわからない……もっと積極的にならないとな」

 


 それからは、アルミスとチサトさんの通訳? と俺の絵で意思疎通を図っていく。話をまとめると、今日中に出発の準備をしてから川沿いに下りていく。イノシシの革やら牙、角、肉は売り物になるから持って帰る。簡易的な背負子しょいこがあるからそれを使って持っていくらしい。俺たち分の背負子も用意されていた。


 さらには敵対勢力もこの辺は出没するらしく、あまり安全とは言えない場所だと言うことだ。狩人さんたちの勢力、魔獣、隣の国の勢力の4つ巴になっている状態らしい。国同士が協力しないのか? と質問してみたら色々な事情があって上手く行ってないとのことだった。


 敵対勢力がいるときは魔力を使うと相手に位置がばれるので魔力のオン、オフに気を付けるようにと、ハンドサインをなんとなく教えてもらった。戦闘になったら迷わず使ってくれ……ということだけど、これ、戦闘あるの前提で話ししてるよな……



「戦いがあるのね……」

「そうだね……人間相手かな?」

「俺達はとりあえず彼らに任せて逃げの一手だな。対人戦のトレーニングの経験は?」

「無いです」

「ないよー」


「……俺たちは今日教わったことをフルに使って逃げまくろうか」


 町までは順調に行くと丸一日くらいかかるらしい。背負子と俺らのスピード次第で途中でキャンプをはるかも……とのことだった。


 一応話はそんな感じで終わった。あとは明日実践あるのみだな。





 それからは多過ぎて処分にこまるイノシシの串焼きパーティをして夜を迎えた。


『タクマ、槍、拾った、どこで?』


 犬人のセクティナがわりと真面目な感じで俺に聞いてきた。

 ああ、そう言えばなんかタグみたいのも拾ったな……落とし主を知ってる感じかな? 俺はしまってあったタグをセクティナに渡した。


『これ あった 一緒』


『……ああ……しばらく姿を見せないと思ったらやっぱりそう言うことだったのね……』

『場所……わからない』


『ええ、良いの、ありがとう知らせてくれて、やっぱりあいつの槍だったのね』


『槍、大丈夫?』

『あなたが使って、いい感じで使いこなせてるじゃない?』


(う、わかんない……)


 セクティナがちょっと察してくれたようで微笑んでくれる。


『あ……槍……タクマ、持つ、良い』


『……ありがとう』



 それから俺たちはハンモックに入ると秒も立たないうちに寝てしまった……後で考えたら、夜の見張りは彼らがやってくれてたんだな……


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