第9話 自己紹介?とこれから
『さて、どうやって会話しようか?』
『巨人族との会話を思い出すしかないかもね、彼らは巨人族よりは遥かに頭が良さそうだけど、簡単な言葉だけで意思疎通を頑張らないと』
「では、自己紹介タイムね! わたしの名前は、千里、ちさとよ! ち さ と」
『ちさと! ちさと!』
「あなたの名前は?」
『アルミス! あるみす あ る み す 』
「アルミスね! よろしく!」
猫人がものすごく嬉しそうな顔をする。なんか二人のノリが近いんだろうな、なんかいつも楽しそうだ。
「千里はどこに行ってもすぐに友達ができちゃうんですよ」
何故かシュウトくんがドヤ顔で俺に自慢してくる。なんとなく二人の関係性がわかってきた気がする。
「俺はタクマ、たくま」
「僕はシュウト、しゅうと」
『わたしはセクティナ、せくてぃな、犬族の戦士だ』
『私はホムテオ、ホムでもテオでもいいぞ魔法研究などを生業にしている』
ちょっと言葉が長いと厳しいな……どこまでが名前だ? 聞き取りが間に合わない……
「セクティナと、ホムデモテオデモイ?」
『……ホム』
「じゃあ、ホムね」
『だから言葉は短くと言ったじゃないか、分かるわけがない』
『振る舞いが知的だからついうっかりしてしまうな……』
さてこれからが本番だな、どうやって意思疎通をしよう。幸いこの犬族の人と、魔法使いっぽい人は知的で友好的に見える。
『あたいちさとよろしくね!』
『ちさと上手!』
『あたい上手! 肉大好き!』
なんかあの二人すごいんですけど……スグに言葉覚えちゃいそうだな。まぁその前にボディ・ランゲージと、あとは絵か。絵はそれなりに得意だからこっちでなんとかするか。
俺は話が通じないのを見て仕方がなく地面に木の枝で、地球っぽ絵と3人の略図、棒人間で描いてみた。その後、山小屋の絵をかいて、そこに3人がいる略図を描く。ジェスチャーを入れてどこにいるかわからない的なことを演じてみる。
「タクマさんすごいな……」
『ああ、やっぱり迷っていたのね。これは、トランスポーターの暴走? 突然山小屋にいたのね。絵がとても上手ね……高度な教育を受けていたのかしら?』
『……もしかして……』
ホムさんが空を指差す、月だな……なぜいきなり月なんだ? もしかして気がついてる? 俺は首を振って先程の自分たちがいた場所の絵に月の絵を描き足す。もちろんこちらの3つの月と、一つの月をだ。さぁ、どう言う反応をする?
『……本当かこれ、もしかして テンセイシャ なのかも?』
『テンセイシャ? とはなにかしら?』
『テンセイシャとは大体30年周期でくる災厄が起きる前にこの世界に来ると言われている神の使いとも、悪魔の使いとも言われている人たちの総称だね』
『彼らが? ……知的であるように見えるけど……とてもそうは思えないわ』
『でも災厄まであと7年もあるぞ? こんなに早く来るのか?』
「なんか転生者って言っている様に聞こえるんですけど」
「転生者ってなんだ?」
「死んだら転生して異世界に飛ぶってやつです、記憶を持ったまま」
「……それってずるくないかい? ってか本当かそれ?」
「本当に知らないんですね……どうなってるんでしょう? 言葉が偶然一致してるだけ?」
「あ、でも転生者が良くわからないから、どう言ったものかちゃんと聞こう。こっちの知っている転生者の意味と違うかもしれない」
「ですね」
『なんかあっちでもテンセイシャって言ってるみたいね』
『そうだね……ああ! 言葉が通じないのがもどかしい! この知的好奇心の高まりを抑えきれない!』
『興奮して相手を刺激しないでくれる?』
『すまない……テンションが上ってしまった』
『とりあえず町まで来てもらって、そこで言葉をもう少し覚えてもらおうかしら?今の所、彼らは元の場所には戻れないだろうし』
『そうだな、彼らからは魔力を感じない……あ、いや、3人共持っているな、魂の奥に眠っている……おお……魔力はかなり高い様に見えるな』
『本当に? ……あら、本当ね。鍛えれば行けそう?』
『……ああ、いい人材だ。フフフ』
「なんかこっち見て笑ってますけど……」
「さっぱりわからないな……ジョン万次郎的にあれこれ聞いていくしかないか……」
「ジョン万次郎?」
「……江戸末期にアメリカの船に拾われた人の話だよ、物の名前などをひたすら聞いて頑張って英語を覚えていくやつ。これから大変だな」
「英語だけでも厳しいのに……ん~でも生の異国語だから楽しみですね」
「……シュウトくんはポジティブでいいね」
それからは時間の許す限りこちらの世界のいろいろな単語などを教えてもらった。日が暮れそうになってきたので6人で山小屋に移動する。山小屋の中には色々な隠し倉庫があって、そこからハンモックやら寝具を出し、虫よけの香などを炊いていく。おそらく隠しているのは泥棒対策だろうけど初日にあったら良かったなぁ……
今日は大変すぎたけどよく生き残れたし、俺は見たこともない種族と話をしたし色々と頭が疲れすぎていなのかそのままハンモックに揺られながら熟睡してしまった……
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