第7話 学校生活

 季節はもう九月、ブロック大会である東京選手権大会まで残り二週間を迎えた。

 練習は早朝と夕方のみにしているけど、学業優先で授業を抜けて練習するのはしていない。


「それでは……問二から五までを解いてください。教科書から抜き出す感じで良いですよ」


 でも、わたしは高校で現代文の授業を受けていて、担当は担任の田中先生なんだけど声がとても心地いい感じで寝てしまいそうになる。

 五時間目の折り返し地点を過ぎた頃の魔の時間帯がとてもきつい……。

 ついウトウトしながら見ていくことがあったりしているのがわかっていた。

 今日は水曜日なので学活が行われているので、それまでの辛抱になると思っている。


 いまは少し眠気が強い時間帯なのか、寝ている子がちらほらいるけどそれは少数派だけど多くなってきている。

 それでも学校にいるときには寝れない性格なので、すぐに寝ないように我慢しながら授業を受けている。


 通っている都立東原ひがしはら高校は市内で進学校というランクではあるけど、この辺一番の進学校と比べれば少し差は出てしまうけど大学の進学率も高い。

 専門とか看護学校、短大とか就職する子もいるから、幅広い進路が選べると思っている。



「それでは六時間目は文化祭の準備をしていてください。あと残り二週間なので頑張りましょう!」

「は~い」


 そんななかで授業が終わって、クラスの子がこっちにやって来た。

 ジャージを上に着て紺のシンプルなスカートを少し丈が短めなのも似合う子だ。

 位置が高めで少し短いポニーテールが印象的で明らかに陽のオーラを放っている。


 うちのクラスで文化祭実行委員になっている佐伯さえきさんだったの。


星宮ほしみやさん。今日は文化祭の準備、できる?」

「うん。今日は練習が七時からだから……六時半までなら」


 わたしは学校行事の準備とかにできるだけ参加したいので、余裕のあるときには可能な限り残っていることが多い。


「そうなんだ。スケートの練習、大変なの?」

「大変だけど、楽しいよ。うちのクラブは世界選手権に出てる選手もいるから、それが刺激になっているんだ」


 つらかったのにいつの間にか楽しい気持ちで練習することができるくらいだ。


 ジャージを上から着て赤色でベニヤ板に塗っていく。

 うちのクラスはお化け屋敷でとても怖い感じにしようと考えたの。


 わたしは佐伯さんがなぜか声をかけてきてくれるのが不思議だった。

 一年生の頃から話しかけてくれているけど、その理由を聞いたことがない。

 彼女は一軍のなかでもまとめ役のような感じで、クラスのなかでも一番の中心人物みたいな感じだ。


 自分はどちらかと言うとクラスのなかでは意外と黙っていることが多いし、昼休みになると屋上でプログラムの振付の確認とかしているから余計クラスメイトと交流が少ないかもしれない。


「佐伯さんって、どうして話かけてくれるの? あまり印象に残らないクラスメイトに」

「そんなことないよ。うちはあまり運動ができないから……フィギュアスケートしてるのを知って、とてもすごく尊敬しているんだよね」


 彼女の瞳はとても輝いていて、それがまぶしくてすごく印象的だったの。


「暁美! こんなところで話してないで実行委員の仕事、行くよ」

「はーい! じゃあね」


 佐伯さんはすぐに教室を出ると、女子の方から舌打ちが聞こえてきた。

 それは仲の良い子のグループでこっちを見て、嫌そうな気持ちをしているのが見えた。

 なんとなくジェラシーのこもった目でこっちを見ているような気がしたので、すぐに立ち上がって片づけていく。


「あんな子のどこが良いのよ」

「わかる。ときどき休んでるよね……ズルしてるよね」

「確かに~」


 そんなことを言われているのは慣れているし、クラブでも始めた頃というか実力が出ないときに言われていたことがあった。


 まあフィギュアスケートの試合でときどき休むことがあったりしていたけど、今シーズンは一応予定では来月の東京選手権大会に出場するときに金曜日は休みになる。

 ときどき欠席しているのでズルしていると思われても仕方ない。


 それに似ているけど……不快感はぬぐえない。

 学校生活はあまり仲の良い子はいないのが現実だし、言い返さない方が良いと思っていた。

 時計の針がしだいに出ないといけない時刻へと近づいているのがわかる。


「星宮さん、いますか?」


 誰かがわたしに声をかけているのが見えて、担任の田中先生がいたの。


「どうしましたか? 田中先生」

「そろそろ来月の試合の予定があったら、出してほしいなと思っていて」

「はい。持ってきます」

「じゃあ。準備、がんばってね」



 翌日の昼休み。

 屋上で弁当を食べると振付の確認とかをするためにバッグの中から音楽プレイヤーを取り出して、イヤホンを耳にして練習をしようとしている。

 着ているのは高校のジャージ、五時間目に体育があるのですぐに行かないといけない。

 ジャージを着てプログラムの練習をしていくのがわかっていたんだ。


「よし。練習をしようかな……」


 音楽プレイヤーで曲名を探して、カチカチとボタンを押していく。

 別に持ち込んでも先生たちがとやかく言われることがないけど、だいたいスマホで聞いている子がほとんどだ。


 最初に流れてきたのは有名なジャズの名曲『シング・シング・シング』でとても楽しい気持ちで滑っていくの。


 すぐにわたしはジャッジ席の前でアピールをしながら、最初にリンクの左側へバックスケーティングで移動してからすぐに新しく投入したトリプルルッツを跳ぶ。

 ジャンプは一回転するだけにして、すぐにフライングキャメルスピン。


 スピンは省略して練習するのは意外と普通かもしれない、試合前とかしょっちゅう行っているから楽しくて仕方がない。

 ステップシークエンスではこの曲で一番楽しいもので、最近は笑顔を意識せずに踊っていくのができるからだ。


 屋上の景色がしだいにリンクに見えてくる。

 冷え切った空気が頬に当たっていくような感覚が伝わっていく。


 わたしは後半に残っているジャンプを跳ぶイメージで後ろ向きになって助走して跳ぶ。

 最初はトリプルフリップ+トリプルトウループのコンビネーション、そこから少し滑ってダブルアクセル。

 ダブルアクセルは助走をつけて陸でジャンプをする。


 わたしはとても楽しいと思えるプログラムは久しぶりで、すぐに演技をしていくのは楽しい。

 曲が終わってポーズを取って、次にフリーの練習をしようと思ったけどチャイムが鳴ったのでやめることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る