第2話 先輩の演技
「あ、
「遅いよ~、
「終わっちゃったの⁉ 早く支度すればよかった……」
インタビューとかされたりしてから少し時間がかかってしまったので、リンクメイトの子のフリーを見逃してしまったんだ。
観客席に来たときは三番滑走の選手の得点のコールがされていた。
わたしの名前が一番上にになっているのがわかって、三番滑走の
「友香ちゃんに抜かされてない!」
「うん、二点差」
二位には友香ちゃんの得点が出ているけど、心臓の鼓動が速くなってきているのがわかった。
このまま行けばすぐに表彰台に乗れるかもしれないというチャンスが一番なんだと思っているんだ。
でも、結城ひまわり杯ではいつも表彰台には乗れていたけど、シニア女子で優勝するのはとても難しいと思っている。
この大会にはほとんどの選手が強いクラブに所属していて、全日本選手権に出場経験者が多いの。
「先に清華ちゃん。座りなよ。これから美樹ちゃんの演技が始まるから」
「そうだね。隣、いいかな?」
「うん」
昨日バッジテスト五級女子で優勝した同い年の
バッジテストというのはフィギュアスケートで出場資格に関わってくる級のこと。
シニアは七級を持っていないと、試合には出ることができない。
『十番、舘野美樹さん。
中学からフィギュアスケートの強豪である聖橋学院に進学したけど、小学校を卒業するまでは東原FSCで練習していた先輩なんだ。
スケートを始めた頃からとても仲良くしてくれていて、いまも大会では話しかけてくれたりしている。
アナウンスが聞こえてから観客席のあちこちから声が聞こえてくるのがわかる。
「美樹ちゃん。ガンバー‼」
「がんばれ~!」
わたしも美樹ちゃんの応援をしていくけど、奥にいる聖橋学院の生徒とか学生さんも応援しているのが見えた。
「舘野、がんばれ!」
「美樹先輩、ガンバー‼」
そのあとに会場内は静かになってから、アイスショーで初披露したばかりの今シーズンのプログラムを滑り始めたんだ。
こうやってじっくり見るのは初めてだったから、すぐに見つめていきたいと思っているんだ。
もう美樹ちゃんが聖橋学院のスケート部に進学してからもう六年が経っているんだと実感する。
オペラ『カルメン』の序曲が聞こえてきて、リズミカルな有名な曲調で滑っていくのがわかった。
美樹ちゃんが前向きに踏み切って回転の勢いで着氷できなかったけど、わたしの目には三回転半していたのが見えた。
転倒してすぐに立ち上がってから演技の流れを途切れないように立ち上がって練習していることが起きているのが見えた。
「トリプルアクセルに挑戦したのかな? 前から練習してるって聞いたけど」
「昨シーズンからロシアの子が四回転跳んでるもんね……」
ロシアの女子選手でジュニアやその下のノービスで四回転ジャンプを跳んでいる選手が増えてきているんだ。
オリンピックシーズンにシニアデビューをする選手にも四回転ジャンパーがいて、そのなかで勝つにはトリプルアクセル以上のジャンプを跳ばないといけない。
一瞬だけ会場内がざわついたけど、美樹ちゃんはそんなことに動じずに滑ってきている。
すぐに曲調が変わってカルメンの『ハバネラ』が流れて、ステップシークエンスが始まっていく。
恋に奔放なカルメンが歌うなかで難しいステップを踏んでいくけど、そのステップがとても難しいもので自分だったら絶対にできないと思う。
エッジの傾きがカーブのときにエッジの角度が深くて、それで倒れないのが一番すごいと感じているんだ。
わたしも挑戦したことがあったけど、練習しているときにステップで転んでしまうのでトレーニングで克服できるかもしれないと感じた。
東原FSCにいた頃はスケーティング重視の練習をしていたこともあって、スピードを出しても難しいステップを滑れるんだと思う。
トリプルルッツ+トリプルトウループを成功させた美樹ちゃんは笑顔でスピンをしていく。
ジャンプはトリプルアクセル以外を成功させていて、それ以外のエレメンツも加点要素が多い演技を続けている。
さっきトリプルルッツの単独ジャンプを成功させて、晴れ晴れとした表情でバレエジャンプをしていく。
スケート靴はとても重いのであれで高くバレエのジャンプのように跳ぶのは脚力が強い。
いまはコレオシークエンスできれいなイナバウアーとイーグルを続けてから、勢いに乗ってフライングコンビネーションスピンを始めている。
「すごいね」
「うん。今年、本気でオリンピックに行きたいと思っているんだね」
「そうだね。シニアに上がって初めてのオリンピックシーズンだし、美樹ちゃんおオリンピックに行きたいと思うよ」
あっという間に美樹ちゃんの演技が終わってからは、すぐに大きな拍手が聞こえてきたのがわかった。
みんなが総立ちで拍手をしてからすぐに美樹ちゃんを讃えて、それにお辞儀で応えてくれる彼女がとてもキラキラしているようですごいなと思っている。
「美樹ちゃんみたいに跳べるなら、跳びたいな……トリプルアクセル」
さっきのトリプルアクセル以外の減点がないのでショートプログラムとの合計とも一位になったんだ。
リンクの電光掲示板には自分の名前が三番目に乗っているのが見えて、心臓がバクバクと高鳴り始めたの。
「美樹ちゃん。アクセル以外は加点されまくってるよね」
「すごいね。美樹ちゃん」
「うん。わかる」
わたしはすぐにリンクの方へ表彰式が行われるのですぐにスケート靴を履いて、リンクサイドに向かって歩き始めた。
美樹ちゃんが小学六年生のときに全日本ノービスAとBで三連覇したのを聞いたときに、わたしはまだ十歳でバッジテスト五級に挑戦していた頃だった。
そのときから六年が経って、同じ試合に立つことができた。
でも、わたしはもっと大きな大会に出場できるようになりたい。
いまの目標は全日本選手権に出場することが一番で、その次に上位入賞して国際大会に派遣されることが夢なんだ。
表彰式で二位にいるのは美樹ちゃんの中高大のチームメイトで、結城ひまわり杯ではよく見かけたことのある
表彰式で名前を呼ばれて表彰台に立つと主催者側から賞状をもらった。
そこには自分の名前と順位が書かれているのを見て、夢なんかじゃなくて現実なんだと実感することができたんだ。
「清華ちゃん。おめでとう、三位はすごいじゃん」
「ありがとう……美樹ちゃん。今度は東京選手権、がんばってきます」
まだ実現するにはまず地方予選で勝ち上がって行かないといけない。
わたしは全日本選手権まで国際大会への派遣がなくて、全日本選手権に向けての照準を合わせることができる。
同じシニアデビューする子でも世界ジュニアに出場したりている子はシニアでもグランプリシリーズへ出場できる確率が高い。
「うん。東日本選手権でね」
今度美樹ちゃんと戦うのは東日本選手権、その前に自分はブロック大会に向けての練習を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます