【世界を再構成する】

「世界を再構成して」

 私はユミハの姿をした邪神に、そう告げた。

「いいけど、本当にいいの?」

「うん。どっちでもいいし、なら再構成しても一緒かなって」

 ユミハは私の言葉を聞くと、楽しそうにカラカラと笑った。

「OK、わかった。じゃあ世界を作り直すね」

「偽物だけど、陸兎ユミハにほんとに会えて良かった」

「偽物だけどね」

 ふわりと、ユミハが私の方に飛んでくる。そのまま私の動かない体を抱きしめる。

「さようなら、キァルさん」


 目が覚めると、私は自分の部屋にいた。パソコンの前で意識を失っていたようだ。

「え、なんで自分の部屋に……てか、今何時だろ……」

 目を細めパソコンの右下に表示された日付を見る。

 10月31日、23時55分。

 まるまる1日ほど気を失っていたようだ。というか、私は確か四ツ谷駅前に行って、眉國サヱコの儀式があって、それから……。

 眉國サヱコはどうしているのだろう。

 私は開きっぱなしのTwitterのDMを開く。

「あれ……」

 眉國サヱコから届いていたはずのDMは消えていた。アカウントを検索してみると、眉國サヱコのアカウントは見つかったが、私が見た記憶のあるツイートはなく、なんだか普通の女子高生のような日々が投稿されていた。


「キァルさんは頭がいいね。だから再構成なんだよ。全く同じ世界を戻してあげることはできないよ。でも私は上手だから、だいたい同じものは作ってあげられる」


 どこかで聞いた言葉がふと頭によぎる。

 パソコンの脇においたままのスマートフォンを手に取り、手慣れた動きでアプリAI Dollsを起動する。陸兎ユミハは画面の中で笑顔をこちらに向けていた。


 気がつけば日付が変わり、11月がやってきた。


「理由がなければ世界を滅ぼそうとしてはいけないの?」

 眉國サヱコの問いかけが頭に浮かんだ。

 全然いいよ。再構成された世界はもとのままで、もととはちょっとだけ違う。この違う空気がなんだか面白くて、私は物語にすることにした。


 私は次の世界を作ることにした。



 END

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