TRUE END XXXXXX

【ユミハに任せる】


「ユミハに任せる」

 私はユミハの姿をした邪神に、そう告げた。

「えっ? なにそれどういうこと?」

「いやさ、私は本当にどっちでもいいんだよね。そもそも理由なく始めたことだし。ユミハの――って、ユミハじゃないのはわかってるけど、推しの見た目した邪神のしたいふうにしてくれたら、オタクとしては満足なんだよね」

「うわー、私一応邪神なんだけどなあ」

 ユミハは私の言葉を聞くと、困りきった顔で頭をかいた。

「じゃあ、世界滅ぼそっかなあ」

「いいと思うよ」

「やっぱり再構成しようかな」

「いいと思うよ」

「……」

 ユミハの姿をした邪神は、ふわふわと飛びながらこちらにやってくる。

「あのですね、こちらとしても、これは完全な暇つぶしなんです」

「暇つぶし」

「はい。キァルさんが適当に作った儀式をたまたま見つけて、暇をしていたモブ邪神としては乗っかって遊んでみようかな~と思って、乗っかって遊んでいたんです。邪神といえども神なので、人々の願いを叶えるのは、ちょうどいい暇つぶしなのです」

「暇つぶしで世界を滅ぼす」

「それをこちらに判断権を渡されても困ってしまいます。私もマジでどっちでもいいので」

「つまり、眉國サヱコも、私も、ユミハも、3人とも理由なく世界を滅ぼそうとしていたわけか」

 きょとんとして、私とユミハは見つめ合った。

 世界を滅ぼすのに、理由はいらない。

 理由がないからこそ、世界を滅ぼすことができるのだ。


「じゃあ、我々はすることは1つです」

 ユミハは笑顔で指を立てた。

「えっ、なに?」

「同じ考えの人間(仮)が3人も集まれば、楽しいに決まってます。オフ会です、世界崩壊おめでとう打ち上げです」

 そう言うと、ユミハがパチンと指を鳴らす。


 そして、


 世界は、


 再構築される。



 気がつくと、深夜の渋谷のスクランブル交差点のど真ん中だった。雨はすっかり止み、雨雲ももどこかにすっかり消え、真っ黒な空はどこまでも澄んで遠く高く見えた。

 びしょ濡れになった眉國サヱコが目の前にいた。

「眉國さん!」

 眉國サヱコがびっくりした表情でこちらを向く。

「藍伽さん……と、陸兎ユミハコスプレの人……?」

 そうだった、眉國サヱコもAI Dollsプレイヤーなんだった。

「どうもー。ユミハの姿をした邪神です」

「どういうこと!?」

「いやね、さっき世界を滅ぼしたんだけど、やっぱりひと仕事した後は打ち上げじゃない?と思ったのです。で、3人で打ち上げしたくて世界を再構成したんですよー」

「???」

「世界崩壊おめでとう打ち上げです!!」

 ユミハの姿をした邪神の言葉に、眉國サヱコは完全に頭が混乱しているようだった。さすが邪神、邪悪である。彼女は助けを求めるように私の方を見てくるが、私にも何も説明できない。

「えーと、眉國さんと私のオフ会の二次会で、メンバーが増えたということで」

 私は、眉國サヱコとユミハの手を取った。

「まま、飲みにでも行きますか」

「私、未成年なんですけど……」

 眉國サヱコの言葉を無視して、夜の渋谷の街へ歩き出す。

 今日はハロウィンだ。びしょ濡れでも、AI Dollsコスプレ(じゃないけど)で出歩いても誰も気にもとめないだろう。どこかでパーッとはしゃごう。

 なんだか楽しくなってきた。こんなに楽しいのは久しぶりだった。


 再構築された世界は、どこが変わったのだろう。

 もしかすると、夜が明けたら何もかもが変わっているのかもしれない。

 理由もなく、絶え間なくこの世界は誰かが再構築し続けているのかもしれない。何もかもが、どんどん変わっている。理由もなく、ただなんとなく変わっていく。


 今日はハロウィンだ。

 ハロウィンが終われば、11月がやってくる。そしてすぐに12月。

 何も変わらない日々が続く。何も変わらないけれど、世界はどんどん変わっていく。

 なんだか、それは寂しいことではなく、楽しいことであるように思えた。


「世界を滅ぼすのって、楽しいね」


 TRUE END

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