第一章 エピローグ


 各々が雨から逃れるように駅構内に退避していく中、二人が片付けを行っていると一人の女性が彼らに歩み寄ってきた。トレードマークのように、髪型はボブカットでカラーメッシュも入れていた。登下校する学生ではないのだろう。スニーカーで大きめのスウェットも印象的な人物で、もぐもぐしながらガムを噛んでいる。


女性に気がついた波田が振り向くと、彼女はガムを口から取り出して握って拭った。


「初めまして波田洋介さん。この声に聞き覚えはあります?」


 波田はもちろん知っていた。あの電話の声の主と話し方の節々が似ている。そうか、こいつが事の発端か。波田は自身の裏にあった奇妙な感覚が、彼女の物であると本能的に感じた。


「お前は一体何がしたい?」


 全てを飲み込みそうな瞳で彼女は波田を見つめた。一瞬、垣間見えた表情がただの女性では無いことを波田は悟る。


「何がしたかったのかな。もう、わからない」


 二人の目線が重なり合う。今日の朝は一段と冷え込んだ気がした。










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 まきなるです。第一章を読んでいただき誠にありがとうございました。第二章は2022年1月からの更新となります。それまで、しばしお待ちいただければと思います。それでは皆様、また物語で会いましょう。

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