神ノイナイセカイ
第1話 魔法ショップと青年
南東に位置する国……オーガニストと呼ばれる国。
レグナたちがそこを訪れる数時間前。
町の奥の少し丘の上にある魔法都市と呼ばれる場所以外では珍しい魔法ショップ。
その街に最近引っ越してきた、マイトという青年とリィラという若い女性が4、5歳くらいの若い娘をつれてその店を訪れた。
「……また、君たちか」
少し面倒くさそうに現れた薄紫色の髪の青年。
「……看板見なかった?俺は魔法ショップの店員、医者じゃないんだぜ?」
知ってる?と目の前の2人の人間に告げる。
……沈黙の圧がある……もちろん薄紫色の髪の青年にその2人が脅威の対象にはならないが、下手をして何か事件をおこされても困る。
「……わかった、今回だけだ」
何度目になるかわからない今回だけ……
「神を奪う時代が終わったと思えば、神を祓う時代だ……俺たちに残された世界が黙って幸せでいられる場所だと思うな、世界ってやつはいつだって残酷だ」
そう、魔法ショップの店員は2人に告げて、女の子の前にしゃがんだ。
女の子は少しおびえるように、マイトのズボンを強く掴んだ。
「大丈夫……俺の目を見て、少しだけ言葉を聞いてくれる?」
そう魔法ショップの青年は女の子に話しかける。
「君のお父さんは……右にいるマイトと言う男性……そして母親は君の左に居るリィラという女性……そうだったよね」
どこか力強い目で女の子を見る魔法ショップの青年。
女の子はそんな目に吸い込まれるように……少し呆然としたあと。
「うん……お父さん、お母さん」
と交互にその手を握った。
「そして、君はその2人の子供の人間だったね?」
そう女の子に尋ねる。
「うん」
女の子はそう魔法ショップの青年に返す。
「紅い月の夜……彼女から目を離すことがないようにね」
そう……女の子を見ながら二人に向かい言った。
「おにーちゃんっ、お父さんが呼んでるっ」
店の奥から12歳くらいの茶髪の少女が大声で、薄紫色の髪の青年を呼ぶ。
「おっさんが?わかった……こっちの用も済んだしすぐ行くよ」
そう妹と思われる少女に返す。
「ありがとうございます」
マイトという青年が頭を下げる。
「……礼を言われることじゃない……なにせ、俺は正しいことをしたのかさえ自分ではわからないんだ」
そう返す。
「それじゃ、俺も忙しいからもういくよ」
薄紫色の髪の青年は立ち上がると、妹らしき少女の元による。
「キノ、おっさんは……工房?」
そう妹らしき少女に尋ねる。
「うん……ねぇ、おにーちゃん?」
今更ではあったが……聞かずにいられなかった。
「どうした、キノ?」
そう兄と呼ばれる青年が聞き返す。
「なんで、お母さんのことはお母さんって呼ぶのに、お父さんのこと……おっさんって呼ぶの?」
そうキノと呼ばれた少女が返す。
「うん……実に利口な疑問だ」
そうキノの頭を撫でる。
「今すぐに受け入れたい提案だ……それでも、俺にとっては、感謝と尊敬する人だ、その人をおっさんという呼び方するのもどうかと思うけどね……」
そう意味深な意味不明な発言をする。
「お母さん……キノ……を守る」
少しどきりとする。
「そのためにも俺は、今の俺という立ち場は忘れてはならないんだ……わかった?」
そうキノに問いかける。
「うん……わかんない」
その返答に兄は楽しそうに笑い。
「うん、実に利口な返事だ」
そう言って誤魔化すように頭を撫でた。
「行こうか……」
そのやり取りを眺めていたマイトとリィラは女の子を連れその場を離れた。
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