第26話

きっとそれからだろう。彼女のことを意識し始めたのは。いや、もっと前かもしれない。彼女はどうしてか僕によく話してくれるから、いつそうなったのかなんてわからなかった。気づけば意識していた。ただそれだけだ。それでも、香奈さん。君がいるから、だから頑張れるんだ。辛い日も君のことを想えば元気になれるんだ。あの日に言った君への言葉は、微塵も偽りなんかなかった。君が見てくれるから頑張れる。君と話したいから頑張った。それだけなんだ。

僕の手からボールが離れる。敵へ真っ直ぐ向かっていく。1人、2人、3人。次々と当てていく。僕は君に見ていてほしいんだ。



ピーッ。

「試合終了!」

時間切れだ。残り2人、間に合わなかった。悔しかった。今まで生きてきた中で、一番悔しい。香奈さん、君に言った言葉を実現できなかったよ。ごめんね。

もう体力も限界だ。あれだけ練習していたのに、膝から崩れ落ちてしまう。



「祐くん……」

私は思わず駆け出した。幼馴染の心配が私の嫉妬を打ち消して。

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