第24話
対戦相手と向き合って握手をする。相手チームの選ばれた選手たちは重量系の運動部が多かった。きっと上から見ると圧倒的に不利な状況だろう。目の前の選手には優勝の二文字しか見えていないようだ。一目見て猛者オーラが溢れ出ていた。でも大丈夫。やれる。なんたってこっちには僕と蓮がいるから。それに僕の中にももう一人いるし……、だからきっと大丈夫。勝てるか勝てないかより、もう一人の僕のために、勝たなきゃいけないから。もう何も怖くない。
試合開始の合図が鳴る。相手からの最初の一投。いきなり豪速球が飛んでくる。構えていなければ避けられなかっただろう速さだ。チームのエースがしっかりと受け止める。みんな必死だ。優勝を目指しているんだから当たり前だろうけど。僕はボールが回ってくるまで避けることに尽くそう。幸い避けることには昔から得意だった。といっても自分の記憶ではないけれど、確か得意だったはずだ。やはり練習よりも気持ちがいい。靴と床の擦れる音。自分の呼吸。ボールが床に付く音。投げるときの音。みんなの歓声。いろんな音が次第に小さく、聞こえなくなっていく。相手の標的が僕になる。ボールがこちらに投げられる。
そして完全に無音になる。
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