第20話

部屋に戻って日記を開く。前の僕がここに人間関係を書いていてくれて助かった。おかげで蓮や茜の事はたいてい理解している。なんだかよくわからないけれど、クラスの人たちのあの目は単なる嫌がらせなどではないはずだ。あの目には見おぼえがある。小さい頃に見た、お母さんの目と一緒だ。父親を見る目と同じ、嫌悪感たっぷりの目。きっと前の僕は、クラスの人たちなんてどうでもいいって顔をしていたんだろう。あの時の父親と同じ、身の回りの人なんて信用してないっていう顔。そんなことをずっとしていたからクラスでもそういう扱いを受けるようになったんだ。多分そうだよね。だから誰も信じてくれないし、嫌悪の目で見られるんだ。今の僕で嫌だって感じるなら前の僕も同じはず。もっとみんなに認められる存在にならないと。下準備はできるだけしておこう。いつ戻るかわかんないし。……戻りたいか?いやいや、とにかくやってみないと分からないしやらないと何も変わらないし。

僕は一体いつ変わってしまったんだろう。昔から人と話すのが好きだったのに。病院で見知らぬ子にまで声を掛けて、みんなと話してる時が1番楽しかったのに。名前も知らない子を好きになったりしてたのに。前の僕は本当に僕なんだろうか。別人じゃないのかな。運動は好きだけど絵はあんまり好きじゃないし。日記とかもつけたこと無かったのに。まるで正反対だ。陽と影、光と闇、白と黒、そんな単語がお似合いなほどに対称的な僕らだ。唯一同じところがあるとすれば、好きな人くらいだろうな。


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