第17話

夢を見る。大勢の人に囲まれている。みんなが誰かに群がっている。みんなが笑顔になっている。きらきらとまぶしくて、まるで隅っこにいる暗い人なんて見えていない。目に光を宿さないロボットのような眼をした、落ちこぼれた僕の事なんて。

「優勝おめでとう。裕君。」

みんなの中から一歩近づいたそういった茜は泣いていた。海は近くにないけれど、鼻の奥を刺すような潮のにおいがした。

「お前もあんだけやればできるんだな。」

この人は...今朝のクラスの人。こんなにも目がきれいだなんて。もっとその目を見てみたいな。

「かっこいいね。人のために頑張るって。」

君は誰だ。背丈も小さい。どう見ても高校生ではない。人一倍透き通っているな。目も、声も、肌も。綺麗だな。もっとずっとここにおぼれていたいな。

人生はそう甘くない。夢の世界でも同じなのか。僕は夢の終わりを感じた。


スマホのアラームが鳴る。さっと手を伸ばし、止める。数分もぞもぞしたのち、寝床から這い出る。どの季節でも朝は起きれないよね。さっきまで見ていた夢に思いをはせながら制服に着替える。リビングへ行くと、妹さんと茜さんがいた。

「おはようございます。遥さん、茜さん。」

二人は驚きつつも、返事をしてくれる。あったかいな。ふとそう感じる。

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