第14話

どこをどう歩いたかも分からず、家に着いた頃には辺りは真っ暗になっていた。妹さんは先に帰っていて、家の中には美味しそうなにおいが広がっていた。なぜだろうか。すごく安心するな。優しい香りがした。パジャマに着替え、リビングに入った。すでに食卓には料理が並べられていた。急いだわけではないけど、お皿の中はすぐに空になってしまった。妹さんはお風呂に入っているらしいのでその間に家の中を見て回った。「遥」と書かれたプレートの部屋以外はすべて見た。リビング、僕の部屋、寝室。そして最後の部屋に手をかけたとき、内側から押された。驚いた僕はその場で座り込んでしまった。出てきた人物は僕を見るなり

「あ、祐君、おかえり~。ご飯食べた?学校どうだった?クラスに行ってもどこにもいなかったから......。どうしたの......?」

不思議そうな目で見てきたその人にはどう映っていたのだろうか。敵意がないとはいえ、知らない人が家にいたらそれは驚いて当然だろう。

「あそっか、まだ名前言ってなかったっけ。えーと、私、新橋茜。小学校の頃に同じ学校でした。覚えてないと思うけど。思い出してくれるといいな~。高校も毎日一緒に行ってたんだよ?そうだ。明日一緒に行かない?あとはねー......あ、ごめん。私だけ話して......。」

きっとこの人は友達が多いんだろうな。これだけ話せるし。さっき玄関で嗅いだ香りはこの人の物だろうな、なんてことを僕はボヤっと考えていた。何も言わないまま立ち上がり、彼女に会釈をする。そして部屋の中をのぞいた。月明かりに照らされた部屋にはいくつもの段ボールが置かれており、そのうちの一つが口を開けていた。その段ボールに入っていたのは、黄色い雨合羽だった。

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