第12話
記憶というモノは曖昧だ。覚えようという意思があって覚えているモノ、覚えようとしなくても覚えているモノ、忘れようとしても忘れられなくて魂に深く刻み込まれたモノ、忘れたくなくても忘れてしまうモノ。身近にあるようでなく、自分で操作をすることができない。そんなモノを失くしてしまったら、人間はどうするのだろうか。自分一人では乗り越えられないモノを目の前にして、周りには一人で頑張れと言われて。一番忘れたくなかったのは本人のはずなのに、もしかしたら忘れたくて仕方ないかもしれないのに。自分よりも悲しまれて。
学校へ向かう準備をする。僕はまだどこに何があるかはわかっていないから、妹さんに出してもらっている。食パンと卵とバターとフライパンとフライ返し。後は菜箸もだっけ。袋から食パンを取り出し、トースターで焼く。その間、フライパンを温めてバターを敷く。卵を二つ溶いてオムレツを作る。焼けたパンの上にオムレツを置いて完成。アイスコーヒーを作って庭へ向かう。僕はよくここで食べていたらしい。日差しが眩しいから大変だっただろうな。前の僕は。日焼けするし。目痛いし。朝ごはんを食べ終え、流しに食器を置く。制服に着替えて学校へ向かう。何故だかわからないが、笑っていなきゃいけないような気持ちになる。どんな時でも笑っていないといけない。前の僕ならわかっているのかもしれないが、今の僕は何もわからなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます