第2話

いつもの帰り道。少し眩しい夕日。汗ばむ背中とは対照的に僕の顔を優しく撫でる風。腕時計を見るともう17時になろうかという時だった。家までの道を少し走っていく。早く帰らなければ。みんながお腹をすかせて待つことになる。特に食べ盛りの妹にはたくさん食べてもらわないと。辺りには美味しそうなカレーやハンバーグといったご近所の晩ごはんの香りが漂っていた。

家につき、がちゃりと新築の玄関を開ける。

「ただいまー。」

するとリビングの方から

「おかえりー。」

と返ってきた。妹の声に混じって誰か別の声と一緒に。

その声の持ち主は今僕が一番会いたくない人のはずだ。今というよりはここ最近かもしれない。もちろん相手はそんなことを知る由もなくこちらに来る。

「おかえり、祐くん。」

綿飴のような声で言ったその人物は、僕がプレゼントした淡い水色のエプロンをつけていた。

彼女の名前は新橋茜(にいばし あかね)。

僕と同じ学年の子で、小学校の頃に一緒の学校だったらしい。お互いに引っ越しているというのにこんな偶然もあるのかと感心していた記憶がある。そもそも小学校の頃の記憶など、友達とチャンバラごっこをしていた記憶と、知らない人に囲まれていた恐怖しか残っていない。それでも今、目の前にいる彼女は、すごく可愛かった。地毛だという色素の薄い茶色の髪に整った顔立ち。髪は肩より少し長いくらいで、僕にはどストライクだ。近くに住んでいるということもあり、学校へは一緒に行き、途中で他の友達とも合流する。休みの日にはみんなで遊びにいくこともあった。たまには2人の日も。距離も縮まり、今では名前で呼ぶような関係だ。

妹も不思議そうにリビングから出てきた。

「何してんの?祐兄。ご飯冷めるよ?」

そこで僕は気がついた。リビングからはとても美味しそうな海老スープの匂いが漂ってきていた。



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