第8話:不純な歯車

ここまで聞いていてどう思うかな?

こんな人生なんて、フィクションだとか、嘘を交えて話していると思うかもしれない。

でもね。本当なんだよ。

話を戻そう。

例えばだ。あなたに今、生きる意味なほどに好きな人がいたとしよう。その人が悲しい思いや苦しい思いをしていたら、傷ついていたら、あなたは一体どうするかな?

きっと助けようとか、慰めよう、せめて心の余裕ができるように寄り添っていよう。そんな風に考えるんじゃないかな?僕だってそう思うからね。

あの頃僕は、きっと誰かにとって必要な存在でいたかったんだ。現実世界の人間は僕なんていなくても生きていけるからさ。僕という歯車がなくたって世界は回る。そう信じていたし今でも信じてる。だから頼られたかった。必要だと言ってほしかった。だから助けようと思ったんだと思う。今思えばクソみたいな動機だよ。でもね、こうでもしなきゃ僕は僕でいることに嫌気がさして、生きることをやめていたと思うんだ。そんな勇気はないんだけどね。

寄り添っていればいつか必ず、誰かが認めてくれるはずだと信じていた。現実じゃあ誰も褒めてはくれなかったけど、ネットの向こうではずっと感謝されていた。だってその人が愛されている分、死なせなかった僕は英雄扱い。それが何よりも嬉しかったし気持ちがよかったんだ。

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