俺、プリンセスと紅茶を飲む①
普通に量販されているティーバッグを使っているのにプリンセス
「
「補習だけど」俺はとぼけたが前薗はおそらく気づいているだろう。
ちょっと天然で小ボケのプリンセスというイメージがあるがそれは仮面だと俺は思っている。何しろあの
「補習だったわね」前薗は天女のように微笑んだ。「何か有用なことを教えてもらっているのかしら」
「字を綺麗に書きなさい、とか」
「そうね、私もそうしたいのだけれど、綺麗に書くと遅くなってしまって時間が足りなくなるの。速く綺麗に書ける人が羨ましいわ」
「
小町先生はインタビューをしろと言ったが、ふだんそういうことをしない俺がそんなことをしたら不自然だ。
できるだけ相手に自分の意思で語らせる。それが鉄則だ。
「村椿さんは頭の回転が速いから。字も綺麗だし書くのも速いわ」
「さすがよく見ているな」
「
「俺はただぼんやり傍観しているだけだけどな」
「そうなのね」
「それでよく村椿に怒られる」
「怒られているように感じるのね?」
「怒っているのではないのか?」
「言い方はきつく感じるかも知れないけれどたいていが愛ある忠告といったものだと思うわ」
「誤解されていると?」
「そうね。反感を持つ人も多いかもしれない。でも
「あいつはM気があるな」小町先生に発破をかけられる俺みたいなものか。「クラス全体の勉強会の評判はどうなのだろう? あれも村椿が提案したみたいだけど」
「あれは自由参加なのよ。千駄堀君も適当に
「学級委員の立場だから提案した?」
「その学級委員になりたくてなったのだから同じことよ。B組をトップにしたい。クラス分けされた時にそう思ったでしょうね」
「三井が?」
「うふ」何だよその思わせ振り。
「小町先生かしらね」
いや、今、生徒の顔を思い浮かべただろ。
「今年のクラス分けはいろいろと前例にないことがなされたの」ほう、興味深い。「私たちの学園には進学に特化した特進クラスはない。でもA組だけが成績優秀者を集めて構成される。これまで例外なく」
「例外がないなんて生徒にわかるのか?」
「あの順位表を見ればわかるでしょう?」
確かに十年分くらい成績優秀者の順位表が校内サイトで見られる。年間総合順位もだ。
なんでそんなものをいつまでも閲覧できるようにしているんだ?
「今年から中高一貫生と高等部入学生の混合クラスになった。例年なら中高一貫生の上位者十八名と高等部入学生の上位者十八名とでA組になる。でも今年はならなかった。年間総合順位二位の
それはあいつが変人だからじゃないのか? H組は別名「変人組」と呼ばれている。
「お前と
中高一貫生の上位十名のうち六人がA組に入れなかった。中高一貫生だけでなく、高等部入学生の上位者も何人かA組に入っていない。
「S組十傑なんて言葉、知っているのね、千駄堀君」
「妹に散々聞かされているからな」
「と言って、完全にランダムにクラス分けしたのでもないのよ。A組は全員上位五十名に入っているし、やはり特別なクラスであることは変わりない。A組の優秀さを維持しつつ成績優秀者を他のクラスにも振り分けた、と考えられているわ。一般には」
またまた思わせ振り。早くその先を聞かせてくれ。
「紅茶、おかわりする?」
「ん、ああ、いただくよ」
俺は空のカップを口にしていた。暫し話が途切れる。そのまま無かったことにされるのを俺は恐れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます