第67話 善悪

身体を拘束され目隠しをされて悶々としているオス2匹。


「おまたせしたわね」


わたしは2人を囲うように合成樹脂魔法レジン・マジックを展開した。


その囲いに手を当てて魔力を流し込んでマジックミラーのような分子構造になるように加工して天井に明かりとなる魔石を設置した。


これでオス2匹からは外は見えず、外野からは丸見えとなる。


隙間から黒影を流し込んで拘束と目隠しを外して黒影を消した。


隣から聞こえる女子陣の喘ぎ声でそそり立っているオス2匹。


「おい! ここから出せ!」

「ふざけんなよ!」


囲いを殴り付けるも2人の力ではびくともしない。

わたしはそれを無視して囲いの上から大量の媚薬を2人に掛けた。


「ヤリたいなら、2人でどうぞ」

「何言ってんだこら!」

「大丈夫よ。男にも穴は2つもあるんだから」


わたしは見えないであろう2人に向かった親指を立てた。


そして上からローションの小瓶を投げ付けて微笑んだ。


後ろでするなら必要らしいので用意した。

ちなみにしっかりと媚薬入りである。


「貴方たちにはひたすら我慢してもらうわ。すぐ横で陵辱されているクラスの女子達の喘ぎ声を聞きながらね」


そわそわしている2人。

男なんて獣だ。

興奮したオスが2匹。

さて、どっちがメスになるのか。


「……腐女子の解説者がいれば盛り上がったのに……」


しくじったわ。

わたしには腐女子の知識はない。

こんな拷問をする事になるなら勉強しておけばよかったわ……


「ちなみに言うけれど、貴方たちからは見えないけどわたしたちから丸見えだからね?」

「はぁ?!」

「マジックミラーよ」


なぜかマジックミラーという言葉にやたらと反応した2人。


取り調べ室を連想したのなら、机と椅子とカツ丼でも用意しておけば良かったのかもしれない。


「そんなに我慢してて大丈夫?」


もじもじしながらしゃがみこむ2人にわたしはさらに媚薬をぶっかけた。


なるべく口に入るように顔目掛けて思いっきり打ち付けた甲斐があったのか、せている。


「か、体が熱い……」

「くっそ……俺もだ……」


服も体も媚薬塗れ。

そして次第に砂川与一の目付きが露骨な獣の目になっていく。


お、これは。

これはきちゃうのか〜。


「と、智樹。俺……もう……」

「は?! おいちょっと待てふざけんな!」

「大丈夫……お前の事も気持ちよくしてやるから……な? いいだろ?」

「おいやめろ近寄んなって! ……」


じわりじわりと坂力智樹に近寄り、ついに壁ドンをした砂川与一。


ここでまさかの壁ドンを拝んでしまうとは思ってなかったわ。

……絵面的には見なくてもよかったけど。


段々となし崩し的に体をまさぐられていく坂力智樹。


「……オス同士の観ても面白くないわね……」


萌えないわ。


わたしは神崎光也の元へ駆け寄った。

神崎光也は目を閉じて暴れている。


「どう? 楽しんでるかしら?」

「ふざけるな!」

「……もしかして、参加したかった? 参加するとしたら男子のところだけど」

「そんなんじゃない!」


頭が痛いのか苦痛で顔が歪んでいる。


「選ばなかった貴方が悪いのよ? 生きるか死ぬか。それを選べばよかっただけなのに」


砂川与一が坂力智樹のモノを咥えているのが目に入ってしまって吐きそうになった。うえっ。


「神崎光也、貴方は自分の選択の結果を見ないといけないわ」


わたしは神崎光也の髪を掴んでみんなの歪んだ顔を見せつけた。


それでも見ようとしないので髪を掴んだまま引き摺って近くまで引きずり寄せた。


「これは貴方の罰であり罪。貴方が今までやってきた事なのよ? どうして見ないの?」

「お、オレは……」

「見て。見なさい。クラスメイトたちの尊厳が失われていくのを」


女子陣は淫らに歪んだ顔と身体を晒し、オス2匹は互いのモノを舐めあっている。


快楽に溺れ、自己の精神を奪われていく。


もう決して満たされることの無い快楽。

これからはひたすらに快楽を求めてわたしの奴隷として媚びへつらう事しかできない。


「全部貴方のせい」


わたしは女子陣の身体に媚薬を垂れ流しながら神崎光也に言った。


中毒性の高い薬品も混ざった媚薬によって快楽は何倍にも増す。


「貴方は選ばなかった。それが間違い。だからわたしに全部奪われる」


わたしを睨みつけてくる神崎光也。

イケメンとは思えない怒りに歪んだ顔。


「じゃあ、これはどう?」


わたしは短剣を取り出して神崎光也に握らせた。


「貴方があの哀れなクラスメイトたちを殺して救うか、それともこのまま薬漬けになって死ぬまでペットとして生かされるか」

「出来るわけないだろ?!」

「貴方が手を汚せばみんなは助かるわ。貴方も助かる。醜くなっていくクラスメイトたちを自分の犠牲にして」


オス同士で性行為に及んでいる2人を見せつけるようにマジックミラーに神崎光也の顔を押し付けた。


いつも上手く立ち回っている神崎光也は、どうするのか。それとももうどうしようもないのか。


「貴方はわたしみたいな陰気なやつにも声をかけて、「誰にでも対等に接する良い人」を演じて、肝心な時には見て見ぬふりをする人だものね」


うわべだけで取り繕って生きてきたクラスの強者。

それだけ器用なのだろう。

わたしにはそんな器用さは無かった。


、ちゃんと見てね? 感じてね? 恐怖も、痛みも、辛そうな声も、己を失いそうな顔も」


世界の「正しさ」なんて、そんなもの。

上手く生きれない奴は駄目で悪。

搾取されて都合のいいように使われてゴミクズのように捨てられる。


元の世界の正しさは、ここでは通用しない。

正義も悪も根源はおなじ。

ベクトルの違いだけ。


誰かを想って振るう正義も、誰かを呪って悪意を吐きつけるのも同じ。


「なにもできない。なにもさせない」


薬によって覚醒した脳に叩き込ませる。

鼓膜を舐めるような喘ぎ声も、肉体を擦り付けられているような匂いも、じっとりと漂うフェロモンの空気の質感も全部。


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