第54話 宣戦布告パレード
「見晴らしはとても良いわね」
わたしは魔族の軍勢を引き連れてグランドル王国近くまで進行していた。
魔物使いの魔族たちは、この間ミーシャたちを降ろした森の奥、グランドル王国の西側に待機させている。
南西の魔王城から直進して現在はグランドル王国の南側にわたしたち魔王軍本体はいる。
わかりやすく進行してきたけど、戦争って実際はどうなのかしら?
もっと慎重にするべき?
「それにしても、魔大樹って大きいわね」
わたしがグランドル王国に投げ込んだ眼球は魔大樹のタネとなり、王都全体へと根を張った。
魔大樹の魔王ジュリアはもっと禍々しい魔大樹を繰り出していたらしいけど、わたしは生命力を奪う類いに作り替えて植えた。
「魔大樹って神秘的な感じするのね」
カトレアがうっとりと魔大樹を見つめていた。
ここだけ見るとピクニックに来た気分。
「生命力を吸い取って育つ青リンゴの魔大樹よ。マンチニルと名付けたわ。青リンゴは魔力を沢山含んでいて、食べると瑞々しい魔力が全身を駆け巡るわ」
神秘の青リンゴ。
けれど魔力はそもそも土地や生命体から吸い取った魔力エネルギーであり、中毒性のある毒リンゴ。
「一般のニンゲンがその青リンゴを食べると中毒になって魔力暴走で爆発するけどね」
「……えげつないなぁ」
「カトレア、褒めないでよっ」
「クロユリ、褒めてはなかったわ」
魔族はそもそも魔力値が高いから食べ過ぎない限り魔力暴走はしないけど、青リンゴを奪い合って爆発していくニンゲンを想像するととても愉快。
「パッと見は居ないわね」
ニンゲン側がどんな風に魔力感知とかしてるのかは知らないけど、これだけわかりやすく魔族の軍勢がいるのに兵士が少ない。
爆発音はしてるから、青リンゴ爆弾が炸裂してて王都はパニック状態なのかもしれない。
まあ、わたしが見越して魔大樹植えたけど、もっとこうお出迎えしてくれてもいいと思うのだけど。
「【獣化】」
わたしはケモ耳としっぽを生やして感覚を鋭くして情報収集を開始した。
「……爆発音、悲鳴、混乱。城壁近くが静かに慌ただしいから、わたしたちを警戒して城壁の防備を強化しようとしてる感じはするわね」
「如何なさいますかクロユリ様」
レビナスが指示を求めて近寄ってきた。
「……どうしようかしら?」
戦争って敵同士が向かい合って怒号を響かせて衝突して始まるイメージなのよね……
「せっかくだから、パレードといきましょうか」
わたしが来た!って事を知らしめましょう。
「かしこまりました!」
レビナスがなにやら準備を始めた。
1列に並ぶ魔族たち(なぜか鼻息が荒い)が四つん這いになっている。
そしてその1列と並列に魔族たちが規則正しく並んで立っている。
「クロユリ様!こちらを!!」
レビナスがピンヒールを持ってきた。
「……ほんとにピンヒール用意したの?」
「はいもちろん!」
「……そう。ありがと」
黒のゴシックドレスに合う真っ黒いピンヒール。
しっかり黒百合の模様の入っていた。
ご丁寧にレビナスがピンヒールを履かせてくれて、そして1列に四つん這いになっている配下たちの方向を指して歩くように促された。
どうやら全員が踏まれたい変態さんらしい。
昨日冗談で言ったのに、まさか本当に踏まれたい配下たちがいるなんて……
しかもこんなに。
「仕方ないわね」
自業自得とはこういう事なのね。
わたしはピンヒールで1人目の
あはっ!!という気持ち悪い声を挙げて喜ぶ床を他所にわたしは歩いた。
男の声に混じり女の子の声もある。
……大丈夫なのか魔族たち。
そんな
わたしは大鎌を召喚して魔力を集めた。
「派手にいきましょうか」
わたしは大鎌に溜めた魔力を上空に向けて振り回して魔力弾をいくつも放った。
一定の高さまで飛んだ魔力弾が破裂して真っ黒い花火が咲いていく。
振り回す度に床がブヒブヒ喘ぐのを無視してひたすら黒花火を放ち続けた。
「最後にデカいのいくわよ」
山を吹き飛ばせるくらいの魔力を圧縮して大鎌を振り上げて上空に打ち上げた。
最後には大きな黒百合の形の花火を炸裂させた。
やりきったわ。もう帰っていいかしら。
「良い汗かいたわっ」
「クロユリ様!攻撃が来ます!」
城壁の上から大量の弓矢と魔法が飛んできた。
「やっと歓迎されたわね」
「クロユリちょっと呑気過ぎっ!」
「大丈夫よ」
わたしは大鎌を横に振って全てを薙ぎ払った。
霧散する魔力と散っていく矢が輝いていてパレードに相応しい。
そして同時に城壁の南門が開いて大量のニンゲンが湧いてきた。
ぞろぞろと出てくるニンゲンがいかにも戦争の始まりらしくこちらに向かって走ってくる。
「レビナス、アレってどのくらい?」
「目測1万かと」
「そう。……じゃあレッドカーペットも欲しいわね」
わたしは依然喘ぐ床に立ったまま大鎌を構えて魔力を流した。
「【首狩ノ舞】」
わたしは音もなく大鎌を振った。
走ってくるニンゲンたちの首が一瞬にして飛び、血飛沫が舞った。
南門から続く血溜りが真っ赤に地面を染めた。
「じゃあ行きましょうか♪」
いざ王都へ。
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