第50話 風が吹いても痛い拷問♪

「意外と粘るのね」

「……くそが……」


手足の爪を全て剥がされた大臣は悲鳴を上げながらもわたしの拷問に耐えていた。


王都から帰ってきて大臣の拷問を始めて早1時間。


「ブタとはいえ一国の大臣。爪を剥がされたくらいはそよ風みたいなものなのね」

「……はっ!、冗談を。……こちとら風が吹いても痛いっての」

「手足が血だらけだものね。痛そう」

「……おめぇが、やったんだろうが……」

「そうよね〜」


風が吹いても痛いということなのでわたしは薬をその場で調合しながら返事を返した。


魔大樹の魔王ジュリアの能力は本当に便利だ。

あらゆる植物の毒を生成すると事ができる。


「ねえ、知ってる?」

「……なにを、だ……」

「毒ってね、生物によって効き目が違うんだって」

「……」


ニンゲンが食べても平気なのに、犬や猫が食べると毒となる。


「生物は身体の中であらゆるものを生成するのよ」

「……拷問中にお勉強か?」


辛うじて笑う大臣。

実験台にしよう。まだ元気そうだし。


「わたしにとってはお勉強ね。……実験でもあるけど」


わたしは大臣にニッコリと微笑み薬を手足にかけた。

即効性があるようにしてみたから、すぐに効くとは思うんだけど……


「……!!……ッガァァァァ!!なんだこれ?!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」


縛られた手足をバタバタさせて痛みを紛らわそうと暴れている。

痛みのあまりデメキンみたいに目を見開いている。

唾が飛んで汚い……


「暴れると余計に痛いわよ?」


半泣きになりながらも震えている。


「……な、なにを、した?……」


わたしはしゃがんで大臣の足をつついた。

するとまた激痛で口を歪ませながら痛みに耐えていた。


「さっき言ってたじゃない?風が吹いても痛いって。だから本当にそうしただけ」


お父さんは痛風持ちだった。

そのくせ安いビールを飲み続けるからよく痛みで部屋を転げ回っていた。


「貴方の神経に直接作用して自ら神経を攻撃しているの」


まあ、かけた薬の成分はプリン体だけどね。

浸透しやすい種類の樹液と合わせて、手足の爪の剥がれた所からかけて神経に直接作用させた。


痛風になると、骨が折れているんではないかと思う程に痛いらしい。

むしろ、骨が折れているだけであってくれと願うほどに痛いらしい。


折れているだけなら治るから、らしい。


「どう?肉を斬られるより神経に直接だから痛いと思うけども」


そう言いながらわたしは足をつんつんと啄く。

これなら、血は出ないから出血で死ぬこともない。

痛みのあまりショック死する可能性はあるか……まいっか。


「……殺してくれ……」

「聞きたい事をまだ何一つ聞けてないもの。殺すなんてご褒美、あげる訳ないわ」


見た目はただ爪を剥がされて血が少し流れているだけだけど、これでも殺してくれと懇願するくらいには辛いのね。

眺めててそう思った。


「まあ、貴方が死んでもまだメイドとか兵士とかいるから聞きたいことは聞けなくもないけど。オスもメスも沢山取ってきたから、実験台には事欠かないし」


あのメイドには媚薬とかも試したいし。


「というわけで、少しでも早く楽になりたいなら聞かれた事について喋った方がいいわよ?痛そうだし」


自分でやっておいてなんだけど、神経が痛いってもうどうしようも無く痛そうよね。


そう思いつつも足を蹴る。

大臣の悲鳴が拷問部屋に響く。


「……殺して下さい……殺して下さい……殺して下さい……」

「ご褒美が欲しい?」

「……はい……」

「ブタのくせに欲しいの?」

「……はい……お願い、します……どうかご慈悲を……」


大の大人が泣きじゃくり体液を顔中から垂れ流して懇願している。


あまりにも滑稽だ。

わたしも、お父さんに虐待され始めた頃はそんな風には懇願したな。

でもなにも変わらなかった。


全ては強者だけが自由にできる。

どんな事をしても許される。

それが曲がり通るのが世界だ。


平等も公平も社会主義も、全部上辺だけの絵空事。


この世は格差があって初めて成立する。


みんな仲良くお手手繋いで歩きましょ、なんてない。


手が無い人は手を繋げないし、歩けない人は置いていかれる。


みんな仲良くってのは、「普通」の人が「普通」に暮らす為の言葉。


「普通」じゃないそれ以下の人は切り捨てる。

見て見ないふりをする。


じゃないとわたしは、なんで誰にも助けて貰えなかったのか。


「じゃあ改めて聴くわね。まず勇者の情報から」



☆☆☆



わたしは天井を見上げていた。

目の前には大臣の死体が安らかに眠っている。


「そう。あいつら、この世界に勇者として来てるのね……」


わたしを殺すために召喚されたクラスメイト。


わたしを虐めた主犯も、わたしに虐めのヘイトをずらした奴も、わたしの机に藁人形をプレゼントしてくれた奴も、平然とわたしを犯したあいつもみんないる。


「わたしは死してなお、呪われているのね……」


わたしは笑った。

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