4話 暇を極めし男
「…あいつら、またやりやがったなぁ!!」
俺は自宅のリビングでそう叫んだ。
辺りを見渡しても人の気配を感じない、と言う事はなるほど…あいつらめ。
俺をおいてダンジョンに行きやがったな!?
というのも数日前の事だ、母さんに”はるくんが強すぎて私が成長できない!”と言わてからというもの、早1週間―――俺を置いてあの馬鹿と二人でダンジョンへ潜る様になってしまった。
何故だ―――強いに越したことはないではないか。
どうして!!!
「俺は今、究極の絶望を味わっている…」
リビングのソファーに倒れる俺は暇を持て余す。
何といっても、うちは貧乏オブ貧乏―――魔物の素材も目立たない様に小出ししているせいなのか普通に生活できる程度の儲けしかない。
と言う事は、この世界のゲーム機を買う事も叶わない―――おまけにスマホすら持たせてもらえないなんて!!
そんなのあんまりだ!!
ピンポーン。
すると突如、部屋にインターホンの音が鳴り響いた。
「ん? 客か?」
ガチャ。
俺は特に何も考える事なく、玄関の扉を開いた。
「あ、あ、あ、あ、あ、あの!! 斎藤
目の前にはうちの母さんと並ぶ位の幼い姿の、杖をもった魔法少女風の人がモジモジとこちらを見つめていた。
「あぁそうだ。 うちの母の家で間違いない」
「母? え!? む、息子さんですか!? あ、あれ…? で、でも5年前に亡くなった…と…」
「ふっ、生きかえったんだ!」
ちょっとからかってやろうと冗談交じりにそう言ってみる。
「成程! 生き返ったんですね!? なにか、蘇生魔法が発動したんですかね!?」
それはもう純粋無垢な笑顔でこちらにそう言ってきた。
成程わかったぞ~こいつ…さては馬鹿だな!?
「あ、そうそうそう…それそれ! で? 訪ねて来たのが初めて―――みたいだが、何のようだ?」
「え、えっと! 桃花さんをダンジョンにお誘いしようと思ったのですが…その…」
「……」
じっと少女の瞳を見つめる―――どうやら嘘は言っていないらしい。
純粋にうちの母をダンジョンに誘おうとした様だ。
「成程。 ならば俺が一緒に付いて行ってやろう、丁度暇を持て余していたからな」
「―――へ? む、息子さんがですか?」
「こう見えてもEランクの冒険者だ。 ふふふ…」
「へ!? 私と同じ!? Eランクですか!? そ、それは願ってもない事ですけど…その~本当にいいんですか?」
「あぁ、構わん暇だし」
―――――――――――――――――――――――――――
「という訳で、私は”封魔の指輪”を集めているんです」
「成程。 その封魔の指輪やらを集めて、錬金すると―」
「は、はい! 私の本職は錬金術師なので!」
どうやら彼女、坂東 春奈(ばんどう はるな)は自分の経営する冒険者用の”アクセサリーショップ”の素材集めを手伝ってほしいとの事。
母もお小遣い稼ぎ程度に事あるごとに手伝っているのだとか。
「なるほど。 封魔の指輪か…」
「どうしたんですか?」
ダンジョンに侵入した俺は何時もの格好でそれを手に取り見つめた。
「おい、春奈」
「は、はい!!」
「この指輪。 普段はどれくらい集められるものなんだ?」
「え、え~っと…いい時は50個位ですかね? 所謂低ランクアイテムの一つですからそれは…」
世間一般的にはゴミ扱いされる封魔の指輪、その能力は自分の魔力を抑え込むとされたゴミアイテムの一つらしい。
しかし、錬金術師からすればこれはブランクアイテムと呼び”他の効果”を付与する事で様々なアクセサリーに化けるようだ。
「ならばその倍だ」
「はい?」
「とりあえず100個は俺が頂く。 その代わり、お前にはもう100個譲ろう」
「―――あの~? 何を?」
何を言っているのか理解できない彼女は終始困惑の表情で俺を見つめていた。
しかし、彼女はこの後知る事となる―――
「さぁ働け! 馬車馬のようになぁ! なはははは!! ぬはははは!!」
「ふぇぇぇぇぇ!? なんですかこの馬鹿みたいな強化魔法は!? わ、私が凄い魔物を殲滅している? えぇ? えぇ!?」
―――――――――――――――――――
あれからどれ程の時が経った頃だろうか。
「よ~し。 とりあえず、200個は集まったな。 まずは100個を俺用に錬金して~」
地面に封魔の指輪を100個置いた俺はそれに向かって魔法を唱える。
「な、何をしているんですか!?」
「んぁ? 何ってー――」
そして宙に浮いた指輪を確認した俺はパンッと手の平を合わせる。
するとあれだけの数あった指輪は更なる進化を遂げ、歪な形をした漆黒の指輪へと姿を変えた。
「錬金だ」
「…え? えぇぇぇぇぇ!?」
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