3話 冒険者登録で勝負!!
翌日。 眠る母さんを尻目に俺はある場所へ向かった。
そこは冒険者ギルドと言う名の施設だ。
受付を終えた俺達は”ある勝負”をしていた。
身体検査から、実技、魔力測定―――その総合結果が冒険者ランクに直結するという。
そして――――
「おっしゃぁあぁあぁ!!!」
「くそぉぉぉぉ!! 何故だ! うわぁぁぁぁ!! 私が、私が制御を誤ったというのかぁ!?」
ガッツポーズでギルドカードを掲げる俺と、反対に両膝を付いてひどく悲しむ様子を見せる流紫安。
だが、勝負は勝負―――これにて決着という訳であるよ流紫安よ!
「あ、あの~…少しよろしいでそうか?」
「ん? なんだ?」
俺達の様子を見てか、ある女性が俺達に話けて来た。
「貴方はEランク。 そして、こちらの方はDランク。 ランクが高い方が優遇されると説明致しましたよ…ね?」
「あぁ、そうだな」
「で、ではなぜ。 彼は…喜んでいないのですか?」
「ふっ。 勝負だからだよ」
「しょ、勝負?」
終始その女性が首をかしげていたのは言うまでもないだろう。
暫くして、落ち着いた様子を見せる流紫安を尻目に俺達は次なる場所を目指す。
「今日登録した、Eランク冒険者だ。 彼女とパーティー申請をしたい」
「っえ? って、斎藤さんじゃないですか!? え!? そ、そちらの方々とパーティー申請を!?」
驚いた様子をみせる、これまた違う服装をした女性。
「は、はい。 この2人とパーティーを組みます!」
「わ、解りました。 では少し――えぇ!? きょ、今日登録したばかり―――斎藤 春樹!? え!? え!? 息子さん!? む、息子さんは5年前にな、亡くなった筈では!?」
「ど、ど、同性同名の方というかぁ~? ちょっと違うっていうかぁ~?」
「な、成程…そ、それは珍しい…」
無事登録を終えた俺達は晴れて新生パーティーとしてギルドに登録を行った。
そう、ここから始まるのだ! 俺と母さんと! なんか余計な奴1名のダンジョン物語が――――
「主様は、ここに居て下さい!」
「なんでだぁ!? いいだろう! 俺も魔物と戦いたい! 戦いたい!!」
「いいですか!? ぐちゃぐちゃになっては意味が意味が無いのですよ!? 私でも流石に繊細な動作を要求されるのです! ここは私とお母さまに任せて! ささっ!」
「ええ~…」
出鼻をくじかれるとはこの事。
いざダンジョンへ侵入したものはいいもの、俺は後ろで2人の様子を眺めるだけ。
「お母さま! もう少し、魔力を練って下さい! ゆっくり球体を作る用に!」
「こ、こうかな?」
「そうです! 魔力は心配いりません! 我が主様から供給されていますので、じゃんじゃん撃ってください!」
「う、うん! えい!! ファイアボール連弾!!」
チュドンチュドンチュドン!!
「すごい! すごいよ! はるくん! 魔法を使っても全然疲れないよ!?」
「だろぉ~! なははは!! なんといっても、俺の力…”無限魔力”のお陰といっても過言ではない!」
「なにそれ、チートじゃん!」
「それだけではありません。 無限の攻撃力と防御を誇り―――さらにはさらには!」
これでもかという自慢話が止まらない相棒さん、だが正直言って俺は滅茶苦茶暇なんである。 それはもう暇を持て余している。
だが、流石はダンジョンというべきか…色々と厄介事もあるようだ。
「おいおい、その女をおいて――うぎゃぁぁぁぁ!」
男は壁にめり込む。
「俺はDランク冒険者だ? だったら命令―――あがぁぁぁぁぁぁ!
ぁ!」
天井に張り付く鎧の男。
「僕の魔法にひれふ―――あばばばばば!!!」
雷に撃たれるローブ姿の男。
どれもこれも流紫安の仕業である。
―――――――――――――――――――――――
「なんだここは、馬鹿しかいないのか」
「説明ではダンジョン内の犯罪は法律が適応されないみたいですからね…このような事もあるのでしょう」
「で、でもよかったのかな? あの人達――放っておいて」
「けっ。 よもや母さんに色目を使う連中だ。 魔物餌になっておけばいい」
「そうです!! 死んで同然。 まぁ、ゴミはゴミですから」
「そ、そこは2人ともハッキリしてるんだね…」
一応手加減はしてやったが、そこから生きて出られるかはあいつら次第という所だろう。 まぁ、どうなって知らないというのが本音である。
それから暫く間―――
「おい、そろそろ俺も…」
「ここは洞窟ですよ? 主様は手加減できるというのですか!? 碌に魔物を相手にしたことがないでしょう!?」
等と詰め寄って来る流紫安、お前の言う事には一理ある気もするが…それもこれもあれもそれも全部。
「おまえのせいだろうがぁ! 俺ばっかりに強敵を譲るからだろう!? だから、たまには雑魚相手をしておけばよかったんだ!」
「雑魚相手の相手など私で十分! 是非とも迫りくる神の眷属や! 神を相手になさってください!」
「あるかぁ! そんなタイミング一生来ないわ!」
「ねぇねぇ…流紫安くん? はるくんってそんなに凄いの?」
と言うやり取りを見てか母さんは流紫安の服の袖を引っ張る。
「凄いというものではありませんよ。 お母さま、今現在も無尽蔵に供給される魔力。 それが何を意味するのか、莫大なエネルギー体を有していながら自らも高火力の魔法が扱えるのです。 もはや異常と言っても過言ではありません」
「い、異常…たしかに…二人とも普通の服だもんね。 よく考えたら…変だった」
そう。 俺達はダンジョンに侵入しているにも関わらず、流紫安は何処から持って来たのか解らない執事服姿。
そして俺に至っては上下黒のジャージにサンダル姿、もはや観光気分と言ってもいい位である。
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