1話 転生成功

『ぶ、無事転生が成功したようで。 ご、ご機嫌麗しゅう…我らが”真なる王”よ…あ、あはは…』

「何を驚いている? まさか、そっちに干渉出来ないとでも思ったのか?」

『…い、いえ…そ、そんな馬鹿な話があるわけないですよ~! あははは!! いででで!!』


あ、こいつ嘘ついたな。

構わず俺はグイッと女神の頭部を仏壇の方に向ける。


『げっ…』


表情から察するに何を知っているようである…と言う事は。


「起きろルシファー」

「はっ!!」

『げぇ!? る、ルシファーまで!? 転生を!?』

「ふん。 こいつは勝手に付いてきただけだ。 それよりもまず、これの説明を願おうか」

「おや? これは、なんですか?」


そういえばルシファーは仏壇の事を知らないんだったな。


「仏様を祀る台。 言わば死人を祀る台だ―――が」

「こ、これは! 魔王様と同じ!?」


俺の顔と仏壇に飾られた写真を交互に見つめるルシファー。

そう、俺が言いたいのはその部分である―――


「さて、説明を願おうか? このクソ女神?」

『……はい』





――――――――――――――――――――――――


「なるほどなぁ~……って納得できるかぁ!?」

「成程。 我々が元居た世界とこの地球が繋がってしまったと!?」

『は、はい…実は五年ほどまでイレギュラーが発生しまして…ある神の一人が、世界をくっ付けた面白んじゃなかろうか~と言いだしまし――』

「名前は?」

『―――はい?』

「名前はなんという神だ?」


正座する女神を見下しながら俺はそう告げるのである。

神の名を教えろと――


『創造神”アトゥム”様で―――』

「ならば失せろ。 創造神アトゥムよ―――」


パチンと指を鳴らす。


『あ、あ…あぁ…あぁ…ひ、ひぃぃぃ…』

「なってしまったものは仕方ない。 だが、異なる世界を繋げる事は”その世界に住まう者達の冒涜”無限の地獄を味わうがいい。 さて、だからといってこの世界を切り離す事はあまりに危険な行為だ」


おまけにこの世界は俺の元居た世界と繋がってしまった事で、現実世界が歪み――この世界にはダンジョンが存在するらしい。

それを攻略する事で生計を立てるもの、他と違いいつも通りこの世界の仕事を全うするもの。


「まぁ、いいか」

「そうですね! こちらは5年ですが、向こうの世界も更に5千年経過している筈です」

「だよな…」


まさか転生と同時に前の世界の未来の姿も間接的に知ってしまう事になるとは、なんとも皮肉な話だろうか。

5千年、恐らく信頼を置いた者達のほとんどはもうあの世界に生きてはいないだろう。

なんで俺達が特殊で魔族は普通千年程しか生きられないのだ。


まぁ! 今となっては関係ない話だけど!


「さて、おいクソ女神。 お前にはこの世界に干渉する様な神が居ないか見張れ。 必要であれば”神を処分する力”を与えてやる。 俺は静かにここでいきたいんだ、わかるだろう?」

『は、は、はい…も、勿論でございます…』

「この際だ。 世界が繋がって、ダンジョンが出来ている事に関しては不問にしてやろう。 が、次は無い。 なんならお前達”女神”も造り変えてやろうか?」

『ひぃぃぃ!! い、いえ!! 次はしっかりと処分致します!』

「よろしい。 いけ…」


シュン!

と女神はその場から姿を消した。

しかし、そんなに俺の事が怖いかね? 自慢じゃないが、今は以前に比べ普通オブ普通の顔をしている筈だ。


「そんなに怖い顔をしていたか?」

「ん? いえ、人間の我が王も愛らしい存在であります! むしろ、可愛いがっている!」


こいつに聞いたことが間違いだったわ。



―――――――――――――――――――――――


暫くして。

こちらへやってくる気配を感知した俺達は寝室の方へ隠れた。

そうこれは…我が母にサプライズ転生をおみまいする事でより母を驚かせてやろうという計画なのである!


カチャカチャ、ガチャ。


「ふぅ~…疲れたわぁ~でも今日も大量大量~!」


懐かしすぎて思わず涙ぐみそうになるが俺はグッと堪えた。

母がリビングのテーブルに座る音を確認した後―――今だ!!


「「さぷらぁぁぁいず!!!」」

「!?」

「いや! なんでお前も一緒に出て来てんだ! サプライズ転生だぞ!? もうこっから一度も出来ないびっくり体験なんだぞ!?」

「な、何を言いますか! 貴方様のお母さまであらせられる方なのであれば! 我が母も同然!」

「いや、お前の母親じゃない。お・れの母親だ!」


等と口喧嘩をしていると母さんは驚いた様子涙を流し始めた。

変ってない。 見た目はほとんど中学生だが―――正真正銘”我が母”なのである


「は、はるくん?」

「ふっ、どうだ? びっくりしてギャン泣きしそうだろう!? なは! なはははは!」

「その気持ち悪い笑い方は! はるくんっ!!」

「ぐぇ!!!」


え? 今、気持ち悪いっていった? 笑い方が気持ち悪いって言った!?

というのお構いなしに母さんは軽くジャンプすると―――俺達を抱きしめ――


「おぃぃぃぃ!! さり気無く母さんの抱擁を受け入れんな!」

「うぐっ…よがっだですねぇ~主ざまぁ…」


母を超えるギャン泣きに思わず引いてしまうが、もう叱る気力もなくなった。

なんでお前が一番ないてるんだ!!

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