最終33話 異世界転生は突然に

 彼が目を開けると、景色が霞がかっていて、ここが何処なのかよく分からない。音さえも薄らぼやけているし、手足も思うように動かせない。

 もしやこれが死後の世界というやつなのだろうかと逡巡するも、答えは出ない。


(天国か? それとも地獄か?)


 それすら判断がつかないほどに、情報が不足している。というか、思考が回らないほどの眠気と数時間ごとの空腹感に襲われていた。


 何が何だか分からない。

 それが彼の現状分析だった。


 だかある時。覚えのある声を聞き取ることができ、彼は理解した。

 また会えたのか、と。


「ったく。父上、元気過ぎじゃねぇか? 隠居してから再婚して、子どもまで……。もう、いい歳のジジイだぞ」

「と、言いつつも、陛下は弟君が可愛くて仕方ないのでしょう? ポケットに隠されているガラガラ、早く出されたら如何ですの?」


 懐かしい声に目を懸命に開けてみると、紅蓮色の髪とラピズラズリ色の髪の男女がこちらを笑顔で覗き込んでいた。「綺麗なダークグレイの瞳ですわ」と女性が淡く微笑んでいる。


 彼は心の中で苦笑した。


 おいおい。次は、モブ一択って言ったじゃねぇか。これじゃ、義姉に執心しちまうぞ。と。




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