コスプレ大好きケーキ屋さん
トマトも柄
第1話 コスプレ大好きケーキ屋さん
とあるところにあるケーキ屋があった。
そこはケーキを主に販売しており、クッキーなどの焼き物も販売していた。
そのケーキの前にコスプレをしているおじさんがいました。
少し紫のかかった黒いローブを着ており、さらに三角帽子を被って私は魔女ですと象徴するように立っていました。
「もうすぐハロウィンですよー。 良かったらケーキやクッキーはどうでしょうか~?」
おじさんが優しい声を出しながら呼び込みをやっている。
皆が珍しいのかおじさんを見ていき、それを面白がっているのか話しかける人もいる。
そこで話しかけてくれた人にクッキーをプレゼントしておじさんが笑顔で対応している。
すると、ケーキ屋の中から急いで若いお兄さんが出てくる。
「ちょっと! オーナー! 何やってるんですか!?」
「何ってハロウィンの宣伝だけど」
「いやいや! それでもコスプレまでしなくて良いでしょ!?」
「ウケが良いからいいじゃない。 ほら、みんな来てくれてる」
「まぁ……それはそうですけど」
「下には正装着てるから」
そう言ってローブを広げて正装を見せる。
「分かりましたので、戻してもらえます? その見せ方があれなんで」
そう言われておじさんはローブを戻した。
「んじゃ、店長はちゃんと店入っといてね。 こっちは売り込みしてるね」
そう言っておじさんは店長と呼んだ人物を店内に押し戻し、売り込みを再び始める。
そこで欲しそうに見てる少年に目が入る。
その子は欲しそうに遠くから見ているが、おじさんには近づいてこない。
まるで避けてるかのように見ている。
おじさんは気になってその子の傍に近寄りました。
「お菓子は好きかい?」
おじさんは話しかけたが、子供は何も答えなかった。
持ってるクッキーを見てむしろ怯えてるようにも見えた。
おじさんが不思議そうに見ていると、奥から母親らしき人が子供に急いで近付いてきている。
「うちの子に何かありましたか!?」
母親は息を取り乱しておじさんに話しかける。
「いえ。 この子に話しかけただけでちょっと怖がられましてね。 おじさんが怖かったのかな? ごめんね」
おじさんがそう言うと、子供は首を横に振って違うという反応を見せた。
母親がそこでおじさんがクッキーを持っている事に気が付いた。
「すみません。 そのクッキーは?」
「これですか? 私、あそこのケーキ屋をやっておりまして、ハロウィン用のクッキーを配りながら話しかけているんですよ。 みんなにも楽しんで欲しいので」
そう言って、おじさんはクッキーを母親に見せた。
「すみません。 この子はあなたに怖がっている訳ではないんですよ」
おじさんは首を傾げている。
「そのクッキーを怖がっているんですよ。 この子、卵アレルギーでして」
「そうだったのですか! それは申し訳ありませんでした」
「いえいえ。 見た感じでは分からないのでそこまで謝らなくて大丈夫ですよ。 なのでこの子ケーキを食べたこと無いのですよ。 食べさせたいのは山々なのですが…」
すると、おじさんが子供に目をやる。
おじさんがそこでニヤッと笑って子供を見る。
「一つお聞きしたいのですが、アレルギーは卵だけですか?」
「え…えぇ。 卵だけです。 他の食べ物は大丈夫です」
「なら、用意できますよ。 卵を使わないお菓子」
「できるのですか!?」
「ケーキと言ったら違うかもしれませんが、クッキーや様々なのを卵を使わずに作るお菓子があるのですよ」
それを聞くと子供が目を輝かせておじさんを見ている。
「ちゃんとハロウィン用でのお菓子で用意するから楽しみにしておいてね」
そこでおじさんが紙とペンを出し、紙に何かを書き始めた。
そして母親にその紙を渡した。
その紙にハロウィン用と~くべつチケットと書かれていた。
「では、ハロウィンにそれを持ってきてください。 その子にも食べれるお菓子を用意しますので」
「ありがとうございます!」
そして親子は頭を下げてその場を去っていった。
おじさんはその後、ケーキ屋に戻り店長に話しかけた。
「しばらく私もフォローに入る。 ハロウィンで忙しくなるからね」
「オーナー自らがですか?」
「君に教えたのは誰だと思っているのかな?」
「そうでしたね。 何をする予定ですか?」
「卵を使わない物を作る。 その新メニューの協力してもらうために私も入るぞ」
「分かりました」
そして、ハロウィン当日。
ケーキ屋はハロウィンでのイベントでいつもより忙しいです。
おじさんのコスプレでの宣伝効果なのか色々なお客さんがひっきりなしにやってきます。
そこにはあの時に会った親子もいました。
母親の方は少し戸惑っているが、子供の方は真っ先にレジに向かっていった。
「すみませんー。 ここのお店の人からこれ貰ったんですけど―」
子供はハロウィン用と~くべつチケットを店員に見せた。
「えと? これは何でしょうか?」
「ここのお店の人に貰いました」
「ここのお店の人? どんな感じの人でした?」
「魔女のおじさん!」
「魔女のおじさん? ああ! 少々お待ちください」
店員が連絡をしに奥へ向かう。
そして少しの時間が経ち、魔女の姿のおじさんが現れた。
「お! チケット持ってきてくれたんだね。 今から準備するね」
そこでおじさんは色々と準備して持ってきてくれた。
ケーキ、クッキーなど様々な物がある。
「すみません。 この子は卵アレルギーでして」
「ええ。 存じております。 だから全て卵が入っていないお菓子を用意しました」
「卵が入っていない?」
「はい。 これらは卵を使わずに作っております。 卵を全く使わないので卵アレルギーでも安全です」
「ケーキ食べれるの!?」
「おう! 食べれるぞ! 卵は全く使ってないから安心して食べてね」
「すみません。 わざわざ準備してもらいまして」
母親が頭を下げると、
「私が進んで準備をしたのですよ。 卵アレルギーだからとその物自体が食べれないってのは辛いですから。 誰も悪くないんですよ。 食べ物も悪くない。 けれど、その味を知らないってのはとても辛いと思います」
そこで親子に小さなケーキを渡した。
「どうぞお食べ下さい」
親子はそのケーキを食べた。
子供はおいしいのか一口また一口と美味しそうに食べている。
「大丈夫?」
母親が聞くと子供は笑顔で返し、
「大丈夫! とってもおいしい!」
子供は笑顔で返して美味しそうに食べている。
「おいしいかい?」
「とってもおいしい!」
「それなら良かった」
おじさんは笑顔で返す。
「こういうイベントってのは楽しめれば良いんだよ。 そういうのがあるなら遠慮せずに聞いてもいいんだよ。 その物を避けるのも大切だけどおじさん達もプロだからね。 その物を使わずに代用して作るって事もできるかもしれないから。 今度からは教えてくれるとおじさん達も手伝えれるからね」
「うん!」
子供が笑顔で答えると、母親も頭を下げた。
「何から何までありがとうございます」
「私達もみんなに楽しんで欲しいのですよ。 もし何かありましたらご相談下さい。 いつでも対応しますので」
その親子はお礼を言って、そのケーキを購入してケーキ屋を後にしました。
そこからしばらくしてクリスマスが近づいてきております。
ケーキ屋の前にはサンタの等身大ぬいぐるみとトナカイの着ぐるみを着たおじさんがいます。
「もうすぐクリスマスだよ~。 お菓子はどうだ~い?」
トナカイがビラを配っている。
「オーナー! 何やってるんですか!?」
「何ってクリスマスイベントのビラ配りだけど?」
「いやいや! 何でトナカイなんですか! 普通サンタでしょ!」
「え? こっちのがウケ良いじゃない?」
「せめてサンタの格好して下さいよ!」
そのやりとりをしている内に二人の親子がやってきた。
「先日のハロウィンはありがとうございました。 息子も凄い喜んでましたよ」
「ああ! ハロウィンの時の! 喜んでもらえて何よりです。 おいしいのを提供できて良かったです」
「それでなんですけどクリスマス用のも予約とかって大丈夫でしょうか?」
「もちろん大丈夫ですよ! 用意しますね。 卵を全く使わないという事で合ってますか?」
「はい! それでお願いします」
町にあるケーキ屋さん。
あのハロウィンから一枚の張り紙が貼られていた。
『アレルギーなどをお持ちのお客様はお気軽にご相談下さい。 コスプレ大好きのおじさんが対応します』
コスプレ大好きケーキ屋さん トマトも柄 @lazily
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